内容説明
俗世間から離れ、隠遁生活を送る陶淵明は、自らの田園体験を通してさまざまな感慨を詠む。その親しみやすい詩は、人々の共感をよぶとともに、日本人の生き方にも大きな影響を与えてきた。「帰去来辞」や「桃花源記」を含め、代表的な詩の世界を楽しみ、詩人の心にふれる。
目次
四言詩
五言詩
辞・記・伝
著者等紹介
釜谷武志[カマタニタケシ]
1953年奈良県生まれ。京都大学大学院修了。神戸大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
111
「帰去来辞」で有名な陶淵明の生涯と作品を分かりやすく解説した書籍。漢詩を読むと時間がゆっくり流れて、ほっと一息つける。陶淵明の詩には、特に悠然とした趣きがある。やはり田園を歌った詩が良い。作者の弾む心が読み手にも真っ直ぐ伝わってくる。田んぼ、山、野原、夕日などありふれたものを歌っているのだが、それらが詩の中で輝いて見える。「帰去来辞」は韻文で、陶淵明の生き方の哲学が簡潔に述べられており、現代人も共感できる内容。結びの四行は本当にその通りだと思う内容で、なぜか涙ぐんでしまった。2016/12/22
しゅてふぁん
30
陶淵明(365-427年)は六朝の時代に活躍した詩人。日本でいう古墳時代…!さすが『田園詩人』と呼ばれるだけあって田園風景や故郷を詠った詩が多く、田園での日常を詠んだ詩は彼の生活を垣間見ることができた。自分の帽子で酒を漉し、それをそのままかぶっていたとか、知事用の官田全てに酒造米を植えようとして妻子に止められたというエピソードが残っていて、どれだけお酒が好きなのよ、と笑ってしまった。淵明が愛読したという古代の地理書である『山海経』がおもしろそうだった。2017/11/05
やいっち
23
「時に及んで当に勉励すべし歳月人を待たず」という言葉がある。吾輩も仄聞したことはある。この一文の中の「勉励」は、「刻苦勉励」に絡められ、懸命に勉強すべしと理解されている方が多い(あるいは吾輩がそう思い込んでいただけなら、ごめんなさい)。本書によると、この言葉は陶淵明の言葉。で、本書の著者によると、彼の詩の中でこの言葉(漢詩)を通じ、「わかいときにこそ、大いに楽しみ遊びなさい」と言っているのだとか。さあ、若い人よ(若くないひとも)、勉励してくださいね。2017/04/22
Timothy
10
同シリーズの李白、杜甫、唐詩選に続いて。少し遡り、絶句や律詩という形式のまだない時代の淵明の詩は、一区切り入るまでが長く、初心者はやや息が切れる。形(肉体)・影・神(たましい)の三者による、死と死すべき存在である我々の生き方についての問答の形をとった詩が面白かった。高校古典で学んだ懐かしの「桃花源記」との再会も嬉しかった。2021/08/19
大先生
9
六朝時代を代表する詩人、陶淵明の入門書です。「依依たるは耦耕に在り 冠を投じて旧墟に旋り 好爵の為に縈われじ 真を衡茅の下に養い 庶わくは善を以て自ら名づけん」心ひかれるのは農耕生活である。官を辞して故郷の村に帰り、高位高官などには縛られず、わがあばら家のもとで本来の生き方をし、善の名で呼ばれるようになりたい。私も同じ気持ちです(笑)偉くも、お金持ちにもなりたいとは思いません。自然の中で暮らせれば幸せだなと。私も子育てが終わったら、自給自足しますよ。2025/04/07