内容説明
寓話と現代文学が美しく融合した作品「カジマイ」ほか、みずみずしい感性が紡ぐ、切ない八つの物語。著者初の短編集。
著者等紹介
池上永一[イケガミエイイチ]
1970年那覇市生まれ。幼年期を石垣島で過ごす。早稲田大学在学中の94年『バガージマヌパナス』で第六回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー
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感想・レビュー
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あたびー
37
沖縄と言っても、舞台は八重山諸島のようです。石垣島とかです。ワイルドなオバアが群雄割拠です。沖縄の人は、ひどくびっくりしたりすると、マブイ(魂のような魂とは違うようなもの)を落としてしまうそうです。そうするとぼんやりしたり精気がなくなってしまうので、落としたマブイを拾いに行かなくてはなりません。結構簡単にびっくりした現場にあった石を拾ってきてハイおしまいみたいなのも読んだことありますが、伝統に則って厳粛な儀式を行わなければならないと言うのも読んだことがあります。主人公裕子は、7つあるマブイを全部2022/09/07
翔亀
37
【沖縄17】八重山民俗小説「風車祭」(1997)と沖縄歴史改変SF「レキオス」(2000)に挟まれた短編集。8作のうち沖縄(八重山含む)が舞台なのは4作あるが、ユタなど民俗色は薄い。SF色に至っては全くない。沖縄の伝統や現実から離れたところ、いわば普遍性のある物語で勝負しようとしたのだろう。その成果は、それなりに現代の<喪失感>が表現されていると思う。現実と幻想(異界ともいえるか)とが交わる物語たちは、沖縄人と旅行者日本人の甘酸っぱいはずの片恋は灼熱の太陽で昇華され(「サトウキビの森」)、前世を信じる↓2021/11/06
澤水月
29
カジマイ、彼の地の僅かな極寒の間に起こるアンファンテリブルな魔物、定石で閉じない話に戦慄。ただ恒川光太郎読後直後だと今の自分の好みは本書のオバアたちの陽気さはちょっと合わないかな。沖縄本集中読み、小説はサクサク進むが狙わず読んだ後半の関東不可解ものが良かった、特に宗教新聞とへび女復活! テーマで未読作家読むのも実に新鮮な出会い、最近現代作家読めてなくて…著者の初期作実験系?のようなので他も読みたく。沖縄幻想もので狂躁的でないのが好みだけどあるかな2017/09/21
shizuka
29
沖縄ベースのファンタジー。キャラが強烈。沖縄のおばあのイメージが作り上げられてしまう。沖縄が舞台じゃないお話もちらほら。それはどちらかというと軽いホラーのよう。全然怖くはないんだけど、ちょっと背筋がぞっとする。『カジマイ』、想像を裏切られる。いいおばあと悪いおばあが出てきて、普通だったらいいおばあは幸せに、悪いおばあには罰が当たるのがお約束、でもな、違うんだな。いいおばあ、救われず少しだけかわいそう。なんだろう、自分のほんとうの気持ちに偽って生きてはいけないってことなのかなあ。心地よい毒気のある1冊。2016/01/27
そふぃあ
20
沖縄の蒸すような熱気と摩訶不思議さが感じられる。「失踪する夜」が特に好き。寝る前に読むと良い。2020/11/30