内容説明
学校には行かなかった。集団生活は難しい。僕には、人の顔がわからないんだ。だから匂いと声で、手を握って、人を見分けてる。20歳を過ぎ自由行動を許されて、井の頭公園にやって来た。冒険するために!公園の湧水は川となって高田馬場を、水道橋を流れ、御茶ノ水を通って隅田川に注ぎ、海に出る。神田川が終わるところを見るために、僕は、公園から海に向かって歩き出す。だってそれが、サマーバケーションだから。
著者等紹介
古川日出男[フルカワヒデオ]
1966年福島県生まれ。98年『13』でデビュー。01年『アラビアの夜の種族』(第55回日本推理作家協会賞及び第23回日本SF大賞受賞)。05年『ベルカ、吠えないのか?』(第133回直木賞候補)、『LOVE』(第19回三島由紀夫賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アポロ
46
神田川、桜もキレイなんだよな!東京住んでるとき神田川沿いの道はチャリで毎日通ってたな!なんか懐かしい気持ちになった!2020/04/18
さっとる◎
44
からだが暖かくなる、気持ちが優しくなれる、夏の太陽に包まれる。僕たちが全力で夏休みする長くて短い1日のお話。夏休み、素敵な言葉。でも本当の夏休みって?こどもの頃は長くて永遠だった夏休み。気がついたらどんどん短くなって、もう私の内側で絶滅しちゃったかもしれない夏休み。どこに消滅しちゃったんだろう?そう思ったらこれを読もう(笑)。本物の夏休みがある。井の頭公園から始まる神田川を海まで歩く。こんにちはとさようならを繰り返して。夏の匂いが、夏の音が、胸に刺さる。東京が、川が、ロマンをドラマに鮮やかに変える。2017/05/16
さっとる◎
31
夏休みがあるっていうそれだけの理由で夏が好きになる。よ。EPはすぐに終わってしまうけど、一時停止してずっと消えないラストで、いつも泣いてしまう。2022/07/09
眠る山猫屋
31
真夏に読んだのも良かったかな。ある真夏の小さな、そしてワールドワイドな冒険。井の頭公園から東京湾まで、神田川の流れに沿って、ただ歩いていくだけなのに、途中様々な出会いを繰り返して繋がりを広げていく。素敵な夏の一日。自分でもできそうな、そんな冒険は、真夏の日にしか存在しないのかな。2012/08/19
ちぇけら
26
はじまりとおわりを、感じます。ゼロに収束していくこと。でもけっして、ゼロにならないこと。ゼロコンマゼロゼロゼロ……イチの夏休みのこと。郵便受け、高架線、サイダー。冒険。一瞬のようで、一瞬でないような、夏休みの、東京のこと。こんにちは、でつながる夏は大きなロマンだから、きらきらです。いつかの海はきらきらで、いまでも、いつまでも、そこにあります。だけど僕らは、うつろいます。表情、匂い、感情が。さようなら、を重ねて海に向かいながら。ドラマチックに。また会いましょう。めぐりめぐって、どこかで繰り返されるときに。2019/07/20