出版社内容情報
森 達也[モリ タツヤ]
著・文・その他
角川書店装丁室[カドカワショテンソウテイシツ]
著・文・その他
内容説明
―オウムの中から見ると、外の世界はどう映るのだろう?一九九五年。熱狂的なオウム報道に感じる欠落感の由来を求めて、森達也はオウム真理教のドキュメンタリーを撮り始める。オウムと世間という二つの乖離した社会の狭間であがく広報担当の荒木浩。彼をピンホールとして照射した世界は、かつて見たことのない、生々しい敵意と偏見を剥き出しにしていた―!メディアが流す現実感のない二次情報、正義感の麻痺、蔓延する世論を鋭く批判した問題作!ベルリン映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭をはじめ、香港、カナダと各国映画祭で絶賛された「A」のすべてを描く。
目次
1 荒木浩を選んだ理由
2 命じられた撮影中止
3 オウムと社会との狭間
4 麻原初公判、上九一色で過ごした二日間
5 テレビからの別離
6 勃発した不当逮捕
7 深まる焦燥―僕にオウムが見えていると思いますか?
8 諦観―成就しないドキュメンタリー
9 共有できるものは何だ?
10 ラストシュート
著者等紹介
森達也[モリタツヤ]
1956年生まれ。ディレクターとして、テレビ・ドキュメンタリー作品を多く制作。98年オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画「A」を公開、ベルリン映画祭などに出品し、海外でも高い評価を受ける。2002年「A2」を公開予定
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
007 kazu
36
地下鉄サリン以降吹き荒れたオウム批判の報道。そこから距離を置き、内部からオウムを撮りたいとの思いから広報部の荒木を中心に取材し、映画化までを書籍化した。別角度からの取材という点で成功しておりドキュメンタリとして面白いが、本書の主題はオウム報道を通じた日本の(メディアを含む)社会批判といったところか。「共同体に帰属することで、思考や他者に対しての想像力を停止してしまうのが日本人のメンタリティ」ここだけ切り出してもなんのことやらだが、全体を通して読めば意味が分かるであろう。20年以上前の出版。(続く)2019/08/02
ミエル
35
オウムネタではなく本作の主題は「思考停止」について問いかけていると読み取った。著者のスタンスは、あくまでも結論を下さず問題提起のみに徹しており、ほとんど媒体そのものになりきっている。この問いかけにどう答えるのか?言葉を持たない人の方が多いのではないかと思う。事件の真相を通し、混乱する心象の中から自己の見解として道筋をつける事は難しい。日本人が思考を苦手とするのは哲学に触れずに大人になるから、とは誰の言葉だったか… 未曾有の事件に遭遇すると個人の才覚が問われる事を切に感じた。2018/11/06
崩紫サロメ
32
麻原彰晃逮捕後のオウム真理教についてのドキュメンタリーを制作していたら、テレビ局を解雇され、フリーで映画『A』を制作するに至った話。報道とは、ドキュメンタリーとは、と考えさせられ、またオウムを生み出した日本の「組織への従属」とういうメンタリティについて鋭く指摘している。また、オウム信者や著者のようにそれを取材する者への激しいバッシングに危機感を覚えている。本書の刊行から20年近く経ち、オウムの記憶は薄らいでも、「他者への憎悪」はより激しくなっているように想う。2020/07/12
たかやん
25
映画版だと質問を投げかける森さんの声や後姿が入り込む程度だったと記憶していますが、この書籍版はドキュメンタリーやメディアの在り方について森さん自身が赤裸々に語る点で読み応えがあります。メディアのアンチテーゼとしてドキュメンタリー作家森達也を生んだのは他でもないメディア自身なのでは?読んでいるとそんな風に思えて仕方ありませんでした。今後A2、A3と順番に読んでいく予定。2018/07/25
i-miya
16
2000.06 『「A」撮影日誌』大幅加筆。(副題)マスコミが報道しなかったオウムの素顔 (あとがき)(解説・宮台眞司) ○「ドキュメンタリーの依頼は初めて」 ○やっと迎えた撮影初日 1996.03 5ヶ月経過。荒木浩。「上」と表現する幹部。○翻訳者になりきれない苦悩=荒木 オウムと社会という21つの言語が使い分けられずに苦悩。○放送できる、この部分?二日目。綺語は最小限に。 清算人弁護士=小野弁護士。突然封鎖、第九サティアン。P036 二. 命じられた撮影中止 ○オウムは殺人集団なんだ! 制作本部長。P2010/02/25