内容説明
鏡は五年かけて大学を卒業したあと、二十四個の就職試験に落ち、いまは小さな倉庫で働いている。弟の汚夢は十八歳になると田舎暮らしを捨て、鏡のアパートへ転がり込んできた。汚夢はかつてアルコール依存症になり、それが原因で両親は離婚した。父親は再婚し、別の家庭を持ち、母親は鏡が大学四年の冬に亡くなってしまった。鏡は節約のため、働かない汚夢に、昼ご飯と水筒に入った氷入りの麦茶を毎日倉庫まで届けさせていたが、それにしても生活はちっとも楽にはならないのであった…。新潮新人賞受賞作『Merci la vie』(『叶えられた祈り』改題)も収録。
著者等紹介
萱野葵[カヤノアオイ]
東京生まれ、上智大学卒。97年新潮新人賞受賞。『ダンボールハウスガール』(角川文庫)は映画化され話題になる
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感想・レビュー
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わん子
14
数年前休職中に故・吾妻ひでおのうつうつひでお日記からたどり着いた。何度目かの再読。これがわからないという感想ばかりだから、わかった気がする私が書く(笑) これは資本主義社会への抵抗、アンチテーゼ。働くのが偉い、弱者はおとなしくしてろなんなら死んでもらっていい、男が偉い、社会貢献が当然...そんな事しなくても本当は人間は当然のように生きていていい。なのにそれに辿り着くにはあまりに不器用で弱く孤独な姉弟の話。彼らの暮らしがあぶりだす資本主義社会の残酷さ。吾妻が言うように読後感は重い。秀逸なディストピア小説。2021/04/25
かさ
6
自宅へ持ち帰った本を予定より早く読み終えてしまったので、息子文庫より拝借しました。途中まで読んでやるせないこの気分を以前にも味わったことがあることを思い出しました。作者を見てやはり!何が言いたいか私には理解できませんでした。分かる人には分かるのでしょね。2016/01/01
YO-HEY@紅蓮ロデオ
3
迫力はあったけどそれだけ。何か、テーマとかあるのかな?解らんかった 2017/08/09
mochimochio
0
新堂冬樹「吐きたいほど愛してる」のしつこくしつこくしつこい感じに似ている。ちょっといっちゃってる感がそっくり。2009/06/06
ぽんぽこ
0
結局なにが言いたいんだ?と疑問に思いつつ読了。最近で言うと村田沙耶香チックな気味悪さはありますが、読み応えとしては断然村田に軍杯です。うーん…気味は悪かったのですが…結局どういうことだったんだろう…?2020/08/13