内容説明
泥棒に入られた。取られたのは二百万円の入った通帳で、しかもすでに引き出されていた。会社勤め時代に爪に火を灯すようにして貯めたお金だ。なんとか一年間何もしないで暮らしていける、ようやくそう思って仕事を辞めたっていうのに…。最後に財布に入っていた八万円だけを身につけて、杏の浮浪生活が始まった―。金ナシ、家ナシ、男ナシ。すべてを失くし、ダンボールハウスでの生活を余儀なくされた女の子の、絶対絶命のサバイバル・ストーリー。
著者等紹介
萱野葵[カヤノアオイ]
1969年、東京生まれ。上智大学卒。’97年に「段ボールハウスガール」で新潮新人文学賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あかつや
4
仕事を辞めて蓄えで1年くらいのんびりするつもりだったのに、空き巣に入られ貯金を全部失う主人公・杏。彼女はなぜか家を捨て、ホームレス生活を開始する。お金を失くして仕方ないから働こうとはならず、最初の方針を貫く骨のある主人公だ。最初は慣れないゴミあさりなどやって、ベーシックな浮浪者として生きていくが、徐々に適応し、今となっては懐かしいテレクラのサクラや家庭教師などで一財産貯蓄してしまう。非常に意地汚く、モラルに乏しく、性格も悪い彼女だけど、いい主人公だと思った。こいつなら生き抜けるだろうっていう説得力がある。2021/11/16
かさ
4
誰が買ったのかわからないが、本棚にあったので読みました。とてもやるせない気持ちにさせられる内容でした。読み終わり、とても悲しい気分です。2015/01/02
T
3
この人は二度と読まない。2015/06/10
アヴィ
2
米倉涼子主演デビュー映画の原作だが、小説の主人公にはあまり共感できない。金を盗られたという事情はわかるが、それで一直線にホームレスと化しダンボールハウスでの暮らしとなるのがわからない。その後の行動も一貫性がなく、ただただ若い女性の転落人生をみるだけな感じ。焼却炉のシーンも死を予感させ読後感もあまりよくありません。2025/01/26
えりちゃん
2
後味悪し。泥棒にコツコツ貯めた200万盗られ、仕事も辞めてしまった後だった杏の絶望感には共感する。そこからの、スッパリと全てを捨てての野宿生活。拾い食いの食糧事情。この辺りの描写は興味深く読めた。捨て鉢で生きれば怖いもんなんかない。サバサバした気持ち良ささえ感じたが、お金を得るようになってからの杏の行動はいただけない。家庭教師の子を騙し、善意の人を欺き、そしてまた200万貯めて。いったい何になるの? 未来への活路も人としての矜持も何も感じない。荒廃した気分を味わうラストの焼却炉シーンだった。2017/04/07