出版社内容情報
真珠湾攻撃のただ中で起きた海軍大尉の怪死。その謎に端を発する空前絶後の一代ミステリ・ロマン。小説のあらゆる可能性と魅力を極限まで追求した世紀の大作。
内容説明
昭和十六年十二月八日、日本軍が真珠湾攻撃で歴史的成果を勝ち取った直後、空母「蒼龍」に着艦した九九艦爆搭乗員、榊原大尉が不可解な服毒死を遂げた。ほぼ同時に伊号潜水艦では特殊潜航艇乗組員が出撃前に艦長に託した遺書が何者かに盗まれた。伊号潜水艦の先任将校、加多瀬大尉は、東京に帰還した後、未亡人となった志津子の依頼を受け、榊原の死の真相を追い始めた。まもなく加多瀬は、軍部と関係している鎌倉の「国際問題研究所」に辿りつく。だが、錯綜する謎の糸は、更なる迷宮へと加多瀬を導いてゆく。
著者等紹介
奥泉光[オクイズミヒカル]
1956年山形生まれ。国際基督教大学大学院比較文化研究科修了。『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、『石の来歴』で芥川賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てふてふこ
12
昭和16年12月8日の真珠湾攻撃。参戦した加多瀬大尉と顔振整備兵曹長の2つの目線で語られる。上巻では主に加多瀬とその妹・範子がメイン。戦友の謎の死を追いつつ、その妻に恋焦がれる加多瀬。行き着く先は、何とも怪しい国際問題研究所。宗教・超能力・戦争と、恋愛が絡んだお話。既に下巻を読んでますが、混乱さが増しています。2014/04/11
ネムル
10
戦後70年を意識して読んでるわけではないのだが、読み出すまで第二次大戦を扱ってるのを忘れてた。第一部の戦記小説パートもいいが、二部からはしっとりした昭和文学の香りと奥泉の(漱石的な?)ノリノリが重なって、無類に面白い。特に饒舌な阿呆とその人物への辛辣な眼差しは実に小気味よい。ヒロインの範子を結婚問題と名前の連想から、勝手に原節子でイメージして応援している。そして、突然マジカルな前振りで下巻に。2015/08/13
月世界旅行したい
6
昔、こっちの文庫で読んだなぁ、いまだに日本の小説ならこれが一番好きだ。本当に傑作。今は新しく上下がセットになったバージョンがあるのでそちらをどうぞ。2014/06/10
はまちゃん
2
奥泉光氏の長編ミステリー。太平洋戦争開戦時に真珠湾攻撃に参加した潜水艦では特攻潜水艇乗組員の遺書盗難事件が起こる。一方、空母では真珠湾攻撃から帰艦した爆撃機搭乗の榊原大尉が服毒死する。潜水艦に乗艦した海軍士官 加多瀬が友人であった榊原大尉の死の真相を探っていく内に謎の団体の存在に気付き、そこに近づいていく。上巻ではまだまだ謎が多すぎて全体が全く見えてこない。下巻に突入!2018/01/13
勉誠出版営業部
2
奥泉光さんの『グランド・ミステリー(上)』を読了。前半が第2次世界大戦中の船上を舞台にしていることもあり、『神器』を彷彿とさせますが、あちらに比べると洒脱さはあまりなく、むしろ後半の陸に降りてからのパートが、ミステリっぽさ大で面白い。2016/08/25