内容説明
美貌と歌才に恵まれ権門の夫をもちながら、蜻蛉のようにはかない身の上を嘆く藤原道綱母の21年間の日記。鋭く人生を見つめ、夫の愛情に絶望していく心理を繊細に描く。現代語訳を前面に出し、難解な日記をしっかり理解できるよう構成。現代語訳・原文ともに総ルビ付きで朗読にも最適。
目次
上巻(はかない身の上;兼家の求婚;婚前の文通 ほか)
中巻(三十日三十夜はわがもとに;安和の変―左大臣源高明流罪;弓を競う―道綱の活躍 ほか)
下巻(兼家大納言に昇進;固き妻戸;春雨煙る朝 ほか)
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えにくす
95
道綱母21年間の愛の日記。当初は高飛車だが、通い婚後は一転して気になり出すのが面白い。兼家が町の小路の女の家に出入りすると、凄まじい嫉妬の嵐だ。その女が産んだ子が亡くなると、喜んでいるのが引く。絶頂期は作者の初瀬詣の帰りに、兼家が宇治まで迎えに来るシーンだ。作者は兼家の本邸に住む予定だったけど、自分の従者と時姫の従者が乱闘した為、気不味くなった兼家が時姫だけ迎え入れたらしい。そして兼家が全く通わなくなり、40歳の大晦日に日記は終わる。物悲しいラストだけど、好きな兼家と過ごす事が出来て幸せだったんだろうな。2024/05/16
佐島楓
47
勉強用に読む。男の身勝手、女の身勝手、子の嘆き。あまりいつの世も変わらない。2016/02/29
ホシ
21
昨年末、親戚の結婚式があって、とんぼ返りで一時帰国しました。家族一家で式に参加したのですが、家を出る際、還暦をとうに過ぎた母が両手にネックレスを持って「どっちが良いと思う?」と私に聞いてきました。私は「こっちが良いんじゃない?でも、母さんのことなんて誰も見てないよ」と言ったら、母は大笑いして「本当だね」だと。しかし、この話を聞いた叔母から「女はいくつになっても見られたいものなのだ」と軽くたしなめられました。兼家に負けず劣らず女心の機微を汲めない、私みたいなブ男は『蜻蛉日記』を読むべきです。2019/01/05
coco夏ko10角
21
20年以上にわたる道綱母による日記。いくら気に入らないとはいえあの状況で「今ぞ胸はあきたる。」と言ってしまうのが…女性の嫉妬ってすごい。もっとうまく甘えればお互い心地よく過ごせるんだろうけど、道綱母みたいな人にとってはそれも難しい。でも兼家が結構色んな女性とくっついてもそんなに長続きしないのを見ると、この二人はなんだかんだこれはこれでうまくいってたんだろうなぁ。間を取り持ったり八つ当たりされたり、道綱がちょいちょい気の毒…。2014/09/22
しんすけ
19
平安時代の貴族の慣習が悲劇となった作品と云って良い。 この日記を書いた女は、裕福な家庭に生まれ、美人で、詠(うた)も優れて上手(うま)かった。そして多くの人に愛された。 これだけ書くと幸せな生涯を送った様に観えるのだが、日記からはまったく幸福(しあわせ)感が伝わってこない。 かく年月はつもれど思ふやうにもあらぬ身をし嘆けば、声あらたまるもよろこぼしからず、なほものはかなきを思へば、あるかなきかの心地するかげろふの日記といふべし。 上巻の最後にあるもの。青春への告別のようにさえ観えてくる。2022/06/15
-
- 和書
- 定本俳句入門