内容説明
あの人は美しかった。この世のものとは、思えぬほどに―。憂いにみちた目をした、たおやかな少女と出会った一人の少年。彼もまた、心に孤独と哀しみを湛えていた。その日から、引き裂かれた恋人達の時間が、少しずつ動き始めた。幾重にもからまった、不思議な縁でたどりついた古いピアノの透き通った調べにのせておくる、涙と感動の書き下ろしホラー。
著者等紹介
林巧[ハヤシタクミ]
1961年大阪府生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。妖怪と音楽と人を訪ねて、アジアの都市やジャングルを旅する。98年、初の長編小説『世界の涯ての弓』(講談社)を発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミュポトワ@猫mode
7
再読。あまり有名ではないですが、この本は最高に面白いです!昔、ホラー本にはまっていたときに見つけた最高の当たりです!角川ホラー文庫ですが、まったくホラーではなく、最後泣きそうになります…この著者のほかの本はあらすじしか読んだことがないのですが、この本だけはほかの著書とは別格なのではないでしょうか。すっごくオススメなので、ぜひ読んでもらいたいです!2018/05/09
fukafkacraft
4
傑作の「貫禄」をまとった名作。このような素晴らしい本がベストセラーにならず、中古でしか入手出来ないのは角川ホラーで出版されたことが最大の原因だろう。しかし、50年以上の時代と国を隔てためまぐしい視点変更のせいで謎が多すぎて入り込めず、読了に随分と時間がかかってしまった。終盤になって初めて愛と感動と神秘の音楽小説であることが解るのだが、主役が誰なのか読み終えてもよく解らない。視点移動の複雑さは映画化を前提としたのが理解できるが小説としては失敗。各エピソード描写は繊細で美しいので読み心地は最高。2020/01/31
ここは
4
ホラー文庫に入れてしまって、ホラーが苦手な人を遠ざけてしまうのはもったいない。ピアノ好きな友人に薦められたて読んだが、綺麗なファンタジーだった。ネタ的にはそれほど珍しくもないが、バレエとピアノと子供の組み合わせに、切なさと透明感がよく似合う。2013/12/14
いっちゃん
2
優にあの家はってきかされて、はっとした。そういうこと… 場面がけっこうかわる割に、すうっと入って行けた。パリでのキラキラした思い出が本当に切ない。時を経て、コンサートホールにリナがあらわれた時は、再会できてよかったねって。涙がでそうになりました2013/03/23
kanon
2
図書館で読んでいたにもかかわらず、思わず泣きそうになってしまいました。夏の日の澄んだ小川でキラキラと光が水に反射しているような、そんなお話です。2009/05/29