内容説明
『日本書紀』に見える中大兄皇子は、時の天皇をさしおいて活躍した皇太子であり、律令国家の理想的君主として描かれている。しかし、実際の中大兄は、当時の王位継承の条件によって長いあいだ即位することができず、唐や朝鮮三国など東アジアの激震のなか、むしろ「戦う王」「軍事王」としての生涯を一気に駆け抜けた人物であった。『日本書紀』に対する批判的検討を通じて新たな中大兄皇子像を浮き彫りにし、飛鳥時代史の謎に迫る。
目次
序章 二人の皇太子―厩戸と中大兄
第1章 年十六にして誄す―誕生と少年期
第2章 韓人、鞍作を斬る―乙巳の変の謀議
第3章 「改新之詔」を宣ふ―大化改新の実像(1)
第4章 天に双つの日無し―大化改新の実像(2)
第5章 生々世々、君王を怨みじ―千三百五十年前の冤罪
第6章 水表の軍政―百済救援戦争
第7章 都を近江に―即位への試練
第8章 鼎鳴る―内乱の予兆
終章 近江大津宮天皇の誕生―不改常典と近江令と
著者等紹介
遠山美都男[トオヤマミツオ]
1957年、東京都生まれ。学習院大学文学部史学科卒業。同大学院人文科学研究科史学専攻博士後期課程を中途退学。学習院大学、立教大学、日本大学非常勤講師。97年、学習院大学より博士(史学)の学位を授与される。日本古代史専攻
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感想・レビュー
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ともとも
25
天智天皇こと中大兄皇子。 活躍した時代背景、聖徳太子との共通点。 さらに歴史や中大兄皇子が歩んできた人生の道のり・・・ その魅力に迫りながらも、新しいものの見方、知識を 得ながらも、古代史という歴史の面白さや中大兄皇子の魅力、興味を 引き立てていく。 さらに古代史や中大兄皇子が活躍した時代を知りたいとしみじみ思ってしまいました。 2016/01/24
Gen Kato
0
再読。昔習った大化の改新は今では乙巳の変。ずいぶん違った解釈になったのだなあ。古代史はこういった考察や研究を読みつつ、虚実のあいだを想像と妄想で埋めるのが本当に愉しい。2014/06/11
あおいゆり
0
中大兄は軍事大王であって律令を作ったのでは無いというお話。大海人との関係をもっと知りたかった。2010/02/02
カズザク
0
歴史は、勝者が書き残す物。勝者の子孫が更に装飾…時には虚飾?を加えて書き残す物。今となっては何が正解で不正解なのか?古い時代程わからない。でも、歴史ってそんな物だと思う。色んな人の意見を聞いて、本を読んで、自分なりに好きに解釈すればいい。古代のスーパーヒーローの聖徳太子と天智天皇も、実は後世に造り上げられた?それが本当なら、聖徳太子の神っぷりに驚く。天智天皇が軍事王?歴史で習った解釈との違いが面白い。でも軍事王の息子が、軍事力に屈服とは皮肉な話。古代日本、東アジアを舞台に大活躍。壮大なロマンを感じる。2019/09/14