内容説明
娘を惨殺され、失意の底に沈むエッセイスト草薙のもとに、かつての担当編集者から連絡が入る。小説を書かないか―。娘の供養にと書き始めた小説『屍の王』。しかし、かつて同名の作品が存在し、その著者が娘と妻を殺害し自殺していた事実が明らかになる。自らの過去を探す道程で明かされる恐怖とは…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
眠る山猫屋
41
再読。迷宮のような細工に眩暈が・・・。娘を犯罪被害で亡くした物書きが、再起を賭けて書き出した小説『屍の王』。ある人物の過去を辿る自伝的な展開だったのだが。自分が書き始めた小説に呑み込まれていく描写がおっかない。助け船を出してくれる編集者や元嫁についても次第に曖昧になっていく展開、イヤな感じが凄く良い(苦笑)でも一番気に入った(気になった)のは、東雅夫さんのあとがきかも。いやいや、騙されますわ~ 2017/01/08
ささやか@ケチャップマン
18
娘を惨殺されたエッセイストの男が「屍の王」という小説を執筆するうちに、不可解不条理な恐怖狂気が迫るホラー。やはりこの人はグロテスクな描写が上手い。虚実入り混じる設定である上、不可解不条理なシーンが多いため後半に至るまではストーリーの方向性がわからなかったが、それによってつまらないということはなく、むしろこれからどうなってしまうのだろうという楽しみがあった。後半はモチーフがあってそこはわかりやすいが、しかし、そこでも一捻りある上手いラスト。ちなみに98年発表だが今読んでも面白さが損なわれてることはなかった。2016/11/06
芍薬
11
胃腸炎の時に読んじゃダメだった。現実か幻覚か嘘か真実か誰が生者か死者かも曖昧でグチャグチャでした。2013/12/13
あかつや
10
面白かった。ちょっと目を離したすきに幼い娘を連れ去られ殺されたエッセイストが編集者に勧められて小説を書き出すと、なにやらそれまで認識していた世界が狂いだし、変な声は聞こえてくるわオバケみたいなのは出てくるわ、周りの人は全然違ったこと言うし、読んでるこちらは書かれてること全部が疑わしく思えてくる。現実と異界の境界が最後まであやふやで、その頼りなさがすごく恐ろしい。そして何がいいって、その姿勢を最後の最後まで貫き通したこと。種が明かされてもまだほんとか信じられない。巻末の付記にまで徹底されている。こわーい。2019/10/21
大福
9
娘を亡くしたエッセイストが担当者の勧めでホラー小説を書くが、その取材の過程で、自身の存在や過去が曖昧になる。そして何者かに書かされていることが判明し…といったストーリー。記紀神話に関わる話だが、魚顔の女性が描かれたりでクトゥルー神話も混ざっているような印象。ジョン・カーペンター監督の「マウス オブ マッドネス」に近いというか、もしかしたらオマージュ的作品なのかも。ひたひた、じりじりと近づく狂気、恐怖がたまらない作品。牧野修さんならではのテイストが満載。虚構と現実の位相を狂わせる付記も素晴らしい。2016/03/15