内容説明
犯罪抑止のために開発された「人工脳髄」。健全な脳内環境を整えられることが証明され、いつしかそれは一般市民にも普及していった。両親、友達、周囲が「人工脳髄」を装着していく中で自由意志にこだわり、装着を拒んできた少年に待ち受ける運命とは?人間に潜む深層を鋭く抉った表題作他、日常から宇宙までを舞台に、ホラー短編の名手が紡ぐ怪異と論理の競演。
著者等紹介
小林泰三[コバヤシヤスミ]
1962年、京都府生まれ。大阪大学基礎工学部卒業、同大学院修了。現在、大手電機メーカー勤務。95年『玩具修理者』で第二回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。98年『海を見る人』で第十回SFマガジン読者賞国内部門を受賞。2002年にはデビュー作『玩具修理者』が女優の田中麗奈主演で映画化された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てち
117
本作は単なるホラーではなく、すごく考えさせられる不気味な作品が多かった。今回のテーマは、人間には自由意志があるのかどうかだ。あたかも皆、自由意志を持って自分なりの感想を書いていると思ってるかもしれないが、実は誰かのシナリオ通りに動かされているのかもしれない。もしかしたら、自由意志など存在しないかもしれない。それは誰にもわからないのだ。2021/07/05
mr.lupin
48
小林泰三さん、二冊目の著書読了。SFホラーサスペンスと言うのだろうか? そんな11篇からなる短編集。面白かった作品もあったし逆に意味不明って言う作品もあった。『同窓会』『声』は短いストーリーながらもツボにはまった感じ。『アルデバランから来た男』『友達』も個人的には楽しめた作品だった。世にも奇妙な物語的な感じで読後感決して悪くない一冊だった。それにSFポイッのも斬新で楽しめた。☆☆☆★★2020/02/25
みや
46
ホラー短編11作収録。不可思議で奇怪な設定の世界を当たり前のように書くことで「普通」の価値観を揺らがされる。終始淡々として盛り上がりに欠けるが、だからこそ生まれる薄気味悪い感触と後味の悪さが今回も心地よい。ありがちな設定・展開が多いものの、意思や存在の証明を問われる不安感と見てはいけない世界を覘く期待感の煽り方は毎度の如く絶妙だった。でも、著者の他作品に比べると全体的にちょっと物足りなかったのは否めない。情緒を調整する人口脳髄が普及した世界を描く表題作、ペットや子供を人工玩具で作る『綺麗な子』が特に好き。2019/08/19
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31
とにかく一つ一つのストーリーの設定や展開が斬新でまったく飽きることなく読み切ることが出来ました。小林さんの想像力には脱帽です。本当に色々考えさせられるような話から、軽くふふっと笑えるような展開の話まで本当に振り幅が大きく様々な側面から楽しむことが出来ました。特に好きなのはやはり表題作の「脳髄工場」です。読んでいるうちに自分でも奇妙な感覚に襲われ、自我ってなんだっけ…、自由意思って本当にあるんだろうか…なんて思ってしまいました。というか人の頭に直接脳髄の機械が取り付けられてるところを想像したら生々しいですね2013/05/03
きょちょ
29
短篇11作。 主にホラーもの。 人間の脳をいじる小説・マンガ・絵画は沢山あるが、表題作が一番面白かった。 ただ、結末は違った内容にしても良かったのでは? 他はありきたりだが(結末予想できるという意)、「友達」「停留所まで」が面白かった。 「C市」以外はサクッと読める。 ★★★2018/05/21