内容説明
辞令、刑事課ヲ命ズ―。狛江警察署刑事課に欠員補充された見習い刑事の片岡幸男が見た、それぞれの刑事に隠された、人間の深い絆と愛。半開きのロッカー、音だけの無線、散乱した吸い殻、そして、いつも誰もいない、灯だけがついて色褪せた空気の「刑事部屋」。職業として、人間としての刑事の生きざまをリアルに描いた、警察ミステリーの傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
39
交番勤務にやりがいを見つけられない片岡巡査が退職を決意したとき、狛江署刑事課へ見習いの補充刑事として配属される。そこで出会うことになる刑事たちと事件が徐々に片岡を変えていく。とはいえ起きる事件は地味で小粒ですが、その分刑事たちの個性が浮き彫りになる警察小説で、たとえば、過去数多く表彰されている老刑事の、惚けの発症かと思っていた行動が一変する「恍惚の刑事」など、読み進むほどに味わい深くなっていく一冊でした。ちなみに著者は元警視庁警部補。2021/08/02
タツ フカガワ
36
30歳で狛江署の補充人員として刑事見習いになった片岡の成長を6話連作で描く警察小説。東京都下の所轄署だから窃盗・盗難・ケンカ・身辺警護と事件は地味だが、逆に刑事の個性が浮き上がってくる。なかでも「恍惚刑事」がよかった。片岡が組んだ竹村は、警視総監賞を何十本も受けた大ベテランだが、片岡には惚け症状が見え始めた老刑事のようにしか見えなかったが……。竹本刑事で1冊書いて欲しいくらいのキャラクターですが、2年半前に読んだ本を初読みのように楽しんでいる自分の竹村化がちょっとこわい気がしないでもない。2023/12/10
那由多
22
退職希望の交番勤務巡査が、刑事課の欠員を埋めるため盗犯捜査第二係へ見習い刑事として補充され、そこで出会う刑事たちと仕事をするうちに何かを掴んでいくという、地味な刑事ものだが面白かった。アタリの初読み作家さんでした。ちなみに元警視庁警部補だそうです。もう一冊買ってあるので、そっちも楽しみです。2019/05/27
葵
21
元警察官の佐竹一彦さんがかかれた連作短編集。再読。今は元警察官の作家は珍しくないが、30年近く前の刊行時は少なかったと思う。私にとっては初めてでわくわくしたものだった。本作は、交番勤務にうんざりして転職を決意している主人公が、補充員で刑事見習いとなる話。警察小説というと、警察組織について長々御託がつづられたりするものがよくあるが、この物語は余計な「警察とは…」的なくだりがなく、それなのに「こんな風に動くのか〜」と刑事達や部屋の情景がうかんでくるのが良い。元職の方だからか自然でほのぼのとしていて読みやすい。2024/01/17
reo
12
書評を見てみると、”元警視庁警部補の著者が描く、超リアリズム刑事物語!”そやからそれなりの期待感と共に読んだがな。「恍惚の刑事」なんてコロンボやろ。こ汚い格好であっちフラフラこっちフラフラしててどんぴしゃり犯人に辿り着けるってか?「マドンナ刑事」は24歳独身、英語フランス語が堪能でスチュワーデス試験にパスしたが警官の道を選んだってか!そしてメッチャ別嬪さんやて!ばかもん!そんなんが所轄に居るか。して極めつけは「霊感刑事」や銀行強盗や放火犯を一目で捕まえる!ヴぁかもん!でもねぇ…案外面白いんやねこれが。2018/12/11