内容説明
谷川里彩、二十歳。化粧品会社宣伝部新入社員。男性経験がなく、化粧もきらい。ところが、新製品のキャンペーンモデルのドタキャンによって、偶然居あわせた里彩が代わりをつとめることに…。恋に似た年上のコピーライターとのつきあい、ゲイの友人と同居するアートディレクター・黒川との出会いと、つかのま思い描いた三人の共同生活―。自分が望む普通の暮らしと人々の注目を集めるモデルとの狭間で揺れ動きながらも、背筋を真っ直ぐに伸ばして生きる里彩。柳美里が初めて描いた、新しい時代の恋愛小説。
著者等紹介
柳美里[ユウミリ]
1968年在日韓国人家庭の長女として、横浜に生まれる。88年劇団「青春五月党」を結成。93年『魚の祭』で岸田国士戯曲賞を最年少で受賞した。著書に『家族シネマ』(芥川賞)、『フルハウス』(泉鏡花賞、野間文芸新人賞)など多数
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
380
これが柳美里の初めての恋愛小説であるらしい。それはなんと痛切なまでの寂寥感に閉ざされた恋愛小説であることか。初出は「月刊feature」への連載(1998年6月~2000年2月)のようだ。おそらく柳はこれを書き始めた当初、先々の構想を持ってはいなかったのではないだろうか。里彩を自由に物語世界に解き放った結果がこれだったのではないかと思うのである。化粧品やCM業界といった、いわば「虚」の世界とあくまでも「実」を貫く里彩。愛の破綻はその不可能性を示唆するのだろうか。幕切れも実に見事。推薦!2021/09/24
kera1019
4
再読。前回読んだ時より年齢を重ねたせいか、テレビに出ている人が幸せに見えないというのに同感… 幸せと生き方の差異について考えてしまいました。2018/10/05
kera1019
4
これは恋愛小説なんでしょうか?少なくとも私の苦手な恋愛小説ではありませんでしたし、今まで読んだ柳さんの本とも印象が違いました。仕事、家族、人間関係、何を求めて何処で何をするか… 幸せって何なんかなぁってちょっと考えちゃいました。「生きがい」とか「価値観」みたいなありきたりな言葉で幸福感を表わすと安っぽさを感じるけど「コミュニケーションで一番大切なのは欲望を理解しあう事だ」という黒川の言葉にズキュゥゥーンときました。2013/11/08
壱ヶ谷@多忙
4
学校のテキストとして。困ったことに?里彩の考えに一部同調できてしまう。うーん、里彩はきらきらした世界に生きると眩しさに眩んじゃうひと?なんだろう?か?と思いつつ行動が読みづらかったのも事実。里彩にとってモデル=働いてるひとの認識はないのか、もしくはモデルの自分を働いてると思えないのか。ふよふよして掴み所がないヒトだなあ。これは恋愛小説? 黒川と孝之と三人幸せに生きられたらとおもうけど……。秋葉さんが可哀想。祖母がなかなか良かった。結局女優になるのか、とちょっと驚く。面白かったけど難しい小説だった。2013/10/11
mikki
3
主人公に感情移入できなかった。ストーリー的に期待していたのですが、少し残念な感じでした。2014/05/06