内容説明
人が生まれながらに持つ純粋な哀しみ、生きることそのものの哀しみを心の奥から引き出すことが小説の役割りではないだろうか。書きたいと強く願った少女が成長しやがて母になり、芥川賞を受賞した日々を卒直にひたむきに綴り、作家の原点を明らかにしていく、珠玉の一冊。繊細な強さと静かなる情熱を合わせ持つ著者の、人と作品の全貌がみえてくる唯一のエッセイ集。
目次
私の文章修業
輪郭と空洞
小説の内側と外側
終わりのない小説
小説の向こう側
「冷めない紅茶」とあいまいさと編集者
作品を通して人とつきあう
小説を書きたくなる瞬間
「愛の生活」とわたしの関係
危うい気持ち悪さ〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
246
古書店で買ったために帯がなく、タイトルからは、てっきり小説だとばっかり思っていた。もっとも、読後の今は、ぴったりなタイトルだと思っているのだが。小川洋子という人は、生き方においても誠実で、小説に向かう姿は真摯そのものだと思う。彼女の小説作法は、本人も述べているように、最初に枠組みや構想があるのではなく、1つ1つの言葉を紡いでいくことによって、そこに立ち現れてくるものであるようだ。感受性もまた、きわめて細やかで、そして豊かだ。例えば、『想い出の歌』などを読むと、エッセイならではの面白さが伝わってくる。2012/07/12
KAZOO
133
小川さんのエッセイ集です。小川さんの本は書評集やアンソロジーを中心として結構読んできていますが、エッセイは初めてではないかと思います。ご自分の作品やほかの作者の作品あるいはスポーツを鑑賞するのが趣味であったりするようです。阪神ファンであったとは思いませんでした。倉敷であるので広島かなあと思っていたのですが。軽く読めて小川さんの人となりがわかる気がします。2015/12/07
佐島楓
60
小川さんのエッセイ集。デビューから芥川賞受賞までの経緯や、お子さんを出産なさったことなど、初期の小川さんの素顔を見ることができる。やはり小説を書くために生まれてきた方というのは間違いなくいらして、小川さんもその中の一人だと思う。2015/10/24
ぶんこ
58
デビュー間もない頃のエッセイで、色々と私の中で描いていたイメージと違う部分を発見しました。作家の書斎だか机だかの特集で拝見した整然とした、小川さんらしい清潔な部屋を拝見していたので、整理整頓が苦手、数字に弱い等々の記述に驚きましたが、親近感が湧きました。意外なところも発見しましたが、やっぱり真面目で普通なところは変わらなくて大好き。2017/11/14
蒼伊
45
最近小川さんのエッセイにはまって、古本屋で手にした一冊。初期のエッセイだそうですが、文体が優しいのは今も昔も変わらずでした。言葉のチョイスがとても好きな作家さんです。2013/12/06