内容説明
聖徳太子、額田王、天武天皇、柿本人麻呂をはじめ、古代史に名をとどめる人びとは、その喜怒哀楽の情感を万葉集に遣した。―つぎつぎに起こる天皇や貴族を取り巻く政治的な事件を追い、渦中に生きた人びとの姿を歌集の中に見いだし歌を味わう。いっぽうで防人の歌、東歌といった万葉集の特徴ともいえる庶民の歌に深く心を寄せていく。歌集を読むだけではわからない万葉の世界がひらける入門書。
目次
古代の歌うた
大化の改新
近江文化
壬申の乱
藤原の新都
人麻呂の哀歓
平城の栄華
百花繚乱
天平の陰翳
みやびの抒情
無名歌の世界
著者等紹介
中西進[ナカニシススム]
1929年8月東京生まれ。東京大学大学院博士課程修了。万葉学者(文学博士)。奈良県立万葉文化館館長、田辺聖子文学館館長、国際日本文化研究センター名誉教授、平城遷都1300年記念事業協会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佳音
86
易しく万葉集の歌を味わうことができる。チンケな言い方だが、古代のロマンに浸りつつ。例の令和の箇所はさらりと半ページくらい。大伴旅人の想いが中心です。当然だけど。補足: 中西先生は、元号推薦を否定されているが、本書を読むとそうかもしれないなと思いました。2019/04/25
しゅてふぁん
47
万葉の歌が詠まれた時代を知ることが出来る一冊。皇極・斉明朝の事柄に関しては、先月読んだ『皓月』のおさらいをしているようで感慨深かった。天智・天武の時代も含めて戦だらけで血みどろだよ…。それに比べると、その次の時代を担う首皇子(聖武天皇)は何と呑気な歌を詠んでいることか、と思っても仕方ないよね(笑) 一番心に響いたのは‘恋の奴’の歌で有名な穂積皇子と但馬皇女の悲恋。歌で辿るとこれは本当に切ない。皇子の『けっして恋をしようとしない、寂しげな微笑みのしぐさ』だなんて。2018/10/13
獺祭魚の食客@鯨鯢
37
令和時代の「名付け親」の中西進氏が、飛鳥から奈良までの政治の流れを万葉集の歌により再構成しています。 この歌集には、天皇や皇后のほか有間皇子など権力抗争に巻き込まれて無念の死を遂げた人物の歌も少なくありません。 彼らの辞世の言葉とも言える歌を追体験しながら、歴史に埋もれた悲劇へ思いを馳せることも大切です。 また、令和という新しい元号に込められた意義を、二十一世紀まで続くやまとごころに対する温故知新の気持ちと共に噛みしめたいと思います。 2019/08/11
かふ
22
「万葉集」を一つの歌として点で鑑賞するのではなく歴史(古代史)として一本の線として鑑賞する「万葉集」。万葉以前の伝説の古墳時代。それらの歌は磐姫皇后や雄略天皇にしても、口承として伝承されて(文字以前の)作者性よりも物語性の中で語られてきたのだった。古代史として例えば朝鮮出兵時の額田王の歌は祝詞として、個人よりも国を歌った。百済救済はならず新羅・唐連合軍に敗戦する。そこから当時の文明国家である唐の文化に倣うのだった(第二次世界大戦の敗戦後のアメリカ文化に倣うように)。2019/05/31
しゅわっち
16
短歌に興味を持ち、令和を決めたとされる著者の本を手に取った。私が思い描く文学学者とちがい、万葉集を研究されているせいか、物事を美辞麗句で済まさず、喜怒哀楽、命も扱い、今まで出会ったことのない文章に衝撃を感じた。やはり、文章に力強さを感じるかもしれない。令和を生きるのであれば、著者の文章に一度は、触れてほしいと思った。私個人は、万葉集の興味がだんだん薄れて、完読はできませんでした。しかし、著者の違う本で、文章を味わいたいと思った。2019/08/30