感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
110
下巻は国家社会主義運動の具現化の軌跡。党が強力で一貫性のある指導体制を保つことを不可欠とする彼は多数決ではなくトップダウン式を採用。議会制民主主義、インターナショナリズム、マルクシズム、ボルシェヴィズムなど打倒すべき思想の根底に悉くユダヤ人陰謀説を提言。ヴィジョンの明確さに加えて、天性のカリスマ的演説、プロパガンダ活用、親衛隊や突撃隊による反対勢力の抑え込み、教育や結婚や国民生活への介入など、非合法と合法の使い所を心得た宣伝と世論操作は優れた大衆心理の洞察力があってこそ。政治術研究書としても読み応えあり。2024/11/13
マエダ
94
ヒトラーがユダヤ人を打倒とすべく考えた諸要素とは議会制民主主義、拝金思想、インターナショナリズム、マルクス主義、ソヴィエトのボルシェヴィズム等の一切がユダヤ人の陰謀から派生していると考えていたとのこと、全編を通してアーリア人種至上主義も非常に強く見える。ただ言えることは十一章でまたまた宣伝に対する章が書かれていて、自身の一番の強みを惜しげもなく書いてくれている。2016/05/21
Miyoshi Hirotaka
41
柔道は日露戦争を期に国際化。フランスの作家にヒントを与え、アルセーヌ・ルパンは柔道の達人として設定された。敵国だったロシアにも早い段階で伝わったが、再度対立が深まった1930年代には敵国由来であることを隠すためサンボと名を変えた。一方、「わが闘争」が書かれた1920年代にはヨーロッパ全域に普及していたようで、「突撃隊の訓練には射撃よりも柔道とボクシングが適している」と書いてある。わが国が一度は廃棄した武術が体系化され、新たな価値となり、どのような経由で伝播し、ヒトラーの知るところとなったか興味が尽きない。2016/09/24
Willie the Wildcat
41
「民族」といいつつ、大衆を烏合の衆と見なし、巧みに扇動。「血」への拘りも、政治手段とは言え、(アメリカ人とのハーフの甥と姪を持つ私としては)嫌悪感しかない。(学問的知識より)健康と健全な精神に重きを置く姿勢は一見気をひくも、問題は”健康”と”健全”の定義。一方、当時他政党も民族主義を唱えるようになるなど、時勢のうねりの怖さを嫌でも感じさせる。マスコミの在り方も問うべきだが、選挙民としての見識・判断・行動も、改めて考えさせられる。2015/01/21
さきん
40
やっと下巻も読めた。党をどう盛り上げてくかという内容と後半は、世界情勢をユダヤ陰謀と絡めて分析している。ファッション、プロパカンダ、マスコミ、義勇隊、演説、演劇など、今でも大統領選や芸能界に至るまで、広く通用する具体的な手法が見れた。フランスは大国ドイツは認めない、イギリスと組んでロシアに対抗するなど、ランドパワー重視。ドイツもバイエルンとプロイセンで随分文化が違うが、そこを分裂させない共通の敵を並べ、同じ言語でまとめ、第三の道を説くことによって分裂を防いでいる。2022/03/23