感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みのくま
5
本書は1944年に刊行されたものを1970年に復刊したものだという。かなり古い訳本だが、プラトンの書簡集のみまとまったもので手に入るものは本書以外に見つからない。しかしプラトンの書簡集は徹底的にプラトン自身が登場しない対話篇とは異なり、プラトンの生の声が直接聞こえてくる稀有な体験ができるのだ。プラトンの実在を感じられるので、もっと新訳が出てきてもよいと思うが。ただ内容は第七書簡以外は面白くはないし、そもそも全体的に真偽問題に晒されている。とはいえ解説も読むと、かなり学者が恣意的に真偽を定めているように思う2024/08/19
Doederleinia berycoides
2
対話篇とはひと味違う13通の書簡の文章からプラトンの思想や交友関係を眺めることができる。訳注や解説も詳しく、書簡の真偽問題や書簡の背景となるシケリア旅行とシュラクサイの内乱について概観を知ることができる。シケリア内乱の惨状は痛ましく、ディオニュシオス2世以下シュラクサイ人達に対するプラトンの落胆ぶりは同情に値する。しかしそれでも書簡を通じて、宛名人に丁寧に助言をするプラトンの姿は一読に値する。ディオンに対するプラトンの期待は並々ならぬものを感じる。2012/02/25