内容説明
私もあきらめていた―娘たちはやがて工作員になり、数年後には二度と会えなくなるかもしれない。そしてひとみと私は二十年近くそうしてきたように、変わりばえがしない日々を送っていくのだ。そして北朝鮮で死ぬ。それは百パーセント確実だった…。二〇〇二年九月十七日になるまでは。(本文より)北朝鮮からの帰還者として初めて長い沈黙を破った衝撃の手記、待望の文庫版。
目次
第1章 スーパー・ジェンキンス
第2章 陸軍入隊、そして非武装地帯を越えて
第3章 同居人たち
第4章 料理人、士官候補生、妻たち
第5章 妻・曽我ひとみ
第6章 友人たち、そして異邦人たち
第7章 家庭生活
第8章 ひとみの脱出
第9章 私の脱出
第10章 帰郷
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キコ
12
戦前生まれであるジェンキンス氏の、約40年にも渡る北朝鮮での記録です。ものすごい歴史的価値がある一冊だと思います。重い内容のはずなのに、所々クスリと笑えるようなところもあるのは、さすがアメリカンジョークというかんじ。横田めぐみさんと曽我ひとみさんがデパートの店員を通じて密かにメッセージをやりとりした話など、今まで知らなかったことも沢山出てきました。2016/10/07
Hideki Takahashi
10
ベトナム戦争から逃れるために脱走兵として北朝鮮に渡り、以来40年に渡り囚われの身になったジェンキンス氏の赤裸々な告白は、一切の誇張は無く、かの国の実態を知ることができたことはとても有益でした。本書は原作とともに翻訳の良さもあり、単なるノンフィクションというよりも、一人の男の数奇な人生を描いた小説としても楽しめます。特に、ジェンキンス氏の人間としての弱さと情熱、正直さには心を打たれました。曽我ひとみさんと一時期離れ離れになって、自暴自棄でアルコール依存になった話なども印象に残りました。2017/09/16
ellie
7
新年一冊目。ジェンキンスさんの訃報を聞き、手に取りました。軍を脱走し北朝鮮に渡るという若いときの軽率な行動が、こんなに大きな代償を払うことになるとは。そんな中でも、曽我ひとみさんという伴侶に出会い、家族を得たのは本当によかった。ひとみさんのキス、わたしも映像で見ました。ふたりの愛情が伝わってきました。ジェンキンスさんが幸せな余生を送れて何よりです。ご冥福をお祈りします。それにしても、残る拉致被害者の方々の救出、なんとかならないでしょうか。2018/01/03
高木正雄
3
軍事境界線を越えた経緯や、同じ脱走兵たちとの日常、曽我ひとみさんとの結婚生活、娘を連れての日本へ帰還するまですらすらと読めた。しかし、書きたくても書けなかったことも多かったように思う。北朝鮮に1人残されたドレスノクはどういう気持ちだったのだろう。最近も米兵が軍事境界線を越えたそうだが、米兵は北朝鮮についてよく知らないのだろうか2023/12/06
Quijimna
3
固いベールの向こうの、あの国の素顔。ほんとうに、千万の民がこんな中で暮らしているのか。しかし、それはもしかしたら、ちょっと前のこちら側の姿だったかも。★★★☆☆2013/08/23