出版社内容情報
★本書は『書評空間 KINOKUNIYA BOOKLOG』にエントリーされています。
内容説明
「地下室に立入厳禁!」死んだ伯父が遺してくれたパリ郊外の古いアパート。遺言にはたった一言、こう書かれていた。誘惑に抗しきれずに地下へおりたジョナサンはそのまま姿を消してしまう。そして後を追った妻と幼い子供も帰ってはこなかった。数々の苦難の末、地下に潜入した救助隊が見つけた衝撃の世界とは…!?一方フォンテーヌブローの森の奥で、堅牢な都市と連合を築き、力を蓄えるアリの社会。そして、ついに地球上の二大文明が衝突する日がきた―。人間とアリのファースト・コンタクトを描く衝撃の異色サイエンスホラーミステリ第一巻。
著者等紹介
ウェルベル,ベルナール[ウェルベル,ベルナール][Werber,Bernard]
1962年生まれ。トゥールーズ大学法学部卒業。国立ジャーナリズム学校でジャーナリズムを学び、報道週刊誌で活躍。“Le Nouvel Observateur”の専属科学ジャーナリストを務める
小中陽太郎[コナカヨウタロウ]
1934年生まれ。東京大学文学部フランス文学科卒業。作家。日本ペンクラブ専務。中部大学教授。ニューヨーク市立大学講師
森山隆[モリヤマタカシ]
1931年生まれ。幼少をベルギー、スイスで過ごす。大阪外国語大学スペイン語学科卒業。元パリユネスコ本部人事局長
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
黄色と橙
16
怖かった…。グロテスクな描写が恐ろしいのではなく、巨大なもの、微小なもの、地下の世界、未知の世界への恐怖感に目眩を覚えながら読みました。蟻社会の描写が実にリアルで生々しくて、蟻目線で追体験をしているようでした。人間パートの方がリアリティを感じられなかったほど。蟻は社会的な昆虫だとか、絶対王政社会だとか、人間の社会制度や文化に例えるのは確かに人間側の傲りかもしれないです。蟻は蟻。だからこそ、最後はまた怖い。こんなに視覚的なイメージを喚起される読書は久しぶり。2012/03/28
人力飛行機
14
蟻を主人公にして描かれた物語。ファーストコンタクトテーマのSFという見方もできる。身近な生物である蟻とのコンタクトがなぜ「ファースト」なのかと思われるかもしれないが、この小説に登場する蟻たちは砲撃戦(蟻酸を使う)や戦車戦(大アゴを持つ蟻を他の蟻が運ぶ)といった技術を駆使し、農耕や牧畜により生計を立てる。我々が知るアリのイメージとかけ離れた未知の生物のようである。蟻を単に擬人化するのではなく、彼らの生態や嗜好に即した形で描いている点も素晴らしい。作者の興味が特異な形で結実した、まぎれもないSFの傑作である。2013/08/27
ニミッツクラス
12
03年の税抜705円の初版。角川文庫のウェルベル・コレクションの「蟻」トリロジーの初巻で、先発95年に2分冊で出た単行本の加筆訂正文庫版。本書は「蟻」で、サンリオのアッシュの「蛾」と字面が似ている(笑。 アリの生態と生物学者宅の秘密の地下道を交互に描写した仏本国91年のベストセラー。両者の接点は何か?…と言う謎解きに心躍るも、人間側に生じる出来事や対応が頭抱えるくらい不自然で構成としては論外。アリや昆虫側はその生態を擬人化して蘊蓄を極め、生態サイクルの速さも相まってテンポが良く至極勉強になる。★★★★☆☆2020/01/24
きりぱい
12
お、お、面白すぎたーっ!歴史的な建物に引っ越した家族が謎の地下室へと消えてゆく。捜索する者さえ次々と・・。並行する蟻の話も、最初こそ冗長だなんて思ってしまったけれど、とんでもない!ミクロなのに大スぺクタルな昆虫世界。スパイ大作戦か入り乱れの全面戦争か、人間社会をそっくり映したような蟻社会の緻密さと、ハイテクなのかローテクなのか、その蟻テクに唸る。二つのミステリーが交錯する時、発想の奇抜さに読み応えの面白さが爆発する。科学とファンタジーとミステリーの三つ巴に、昆虫の生殖生態にも詳しくなるというおまけつきだ!2010/07/25
Tatsuya
10
これはやばい。面白すぎる。蟻視点で描かれる、ミクロな世界の冒険・戦争の物語と、人間視点で描かれる、ミステリ風味な謎の失踪事件。この二つがどのように絡んでいくのかと思っていたら、虫好きにはワクワクが止まらない、凄い展開にまとまっていった。特に蟻視点の物語のリアリティとファンタジーのバランスが素晴らしい。早く続編が読みたくてたまらない。2010/06/14