内容説明
十二歳にしてマリファナ、十六歳にしてヘロイン。泥棒、詐欺、武装強盗、ポン引き…悪の限りを尽くし、少年時代から拘置所と貧民窟を行き来していたマックス。明日、八年の刑務所暮らしから晴れて仮釈放される。が、彼の心を支配していたのは、不安と憂鬱だった。いまさら堅気になろうとは思わなかったが、悪事には二度と手を染めたくなかった。が、食うためには金が要る。闇の仕事ならいくらでもある。まともな職が欲しかった。屈辱に耐え、悪の誘惑も断ち、這い上がろうとする前科者に、娑婆は容赦なかった…。圧倒的なリアル。ロマン・ノワール幻の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
daiyuuki
19
裏社会に生きるアウトローのリアルな生態(刑務所の中で自分を守る方法、身分証などの入手方法、強盗の準備や下見の方法など)、前科者の更生の困難さ、規則一辺倒の保護観察官のために無実の罪を着せられ再び犯罪の世界に戻っていくマックスの苦悩や犯罪者を再生産する社会の矛盾に対する怒りが緻密な描写で描かれ、壮絶な傑作ロマンノワールに仕上がっています。2015/08/27
hikarunoir
7
23年前の那覇行き独り旅の友に読み以来の再読。当時の己の甘さから読み解けなかった主人公の狡猾さ、強さ、辛さが似た様な立場になり初めて染みる。2021/08/27
けいちゃっぷ
6
よく分かってないのだが、こういうのをピカレスクとかノワールとか言うのだろうか。決して読みやすくはありませんでしたが、それぞれの場面での主人公の「思い」が伝わってくるような。ちょっと前に読んだ『25時』がビフォーならこっちはアフターだなとか、『無頼の掟』とは時代が違うなとか、映画『暗黒街のふたり』というのもあったな、とか思い出しました。456ページ2010/05/30
みゃーるす
4
再読。やはり素晴らしい。刑務所帰りの男が社会に適応にしようとするも、社会がそれを拒み、男は弾ける。それだけの犯罪小説なのに、なんでこうも素敵なのか。第一部の鬱屈、第二部の飛翔、第三部の暴発と、文体は変わらないのに各部できっちり味付けが変わっている。特に第一部ラストのシーンから第二部に入ってからの、行間から漲ってくる解放感といったらもうね。そして読者の胸に叩き込まれるラスト1行の爽快さもお見事。2012/09/10
秋茄子@ナイス返ししない党党首
3
わたし好みの一人称単視点ノワール。犯罪者としてしか生きられない主人公、その独白が非常に生々しく、同情は出来ないのに引き込まれてしまう。2011/04/06