内容説明
精神科医コンラッドは殺人罪で起訴された少女エリザベスを看ることになった。華奢で息をのむほど美しい彼女だが、ひとたび精神のバランスを失うと、信じられない腕力で人を殺してしまうのだという。エリザベスは、殺人を犯したのは自分ではなく、自分にしか姿の見えない架空の人格「秘密の友人」の仕業なのだと訴える。妄想と現実が交錯する彼女の話に次第に引き込まれていくコンラッド。そんなある日、二人に恐ろしい事件がふりかかる。サイコ・サスペンス第一作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bapaksejahtera
16
著者別名義の作品と比べ、本名の本作は傑作で文庫五百頁も苦にならぬ。冒頭男達が躊躇いなく老女を惨殺して後、家を乗っ取る場面。その家から見渡せる隣家の精神科医が犯人の狙いだった。個人医院を持つ主人公の医者は公立病院の院長から殺人事件の容疑者の美女患者の鑑定を依頼され、その特異な患者の診察にのめり込む。二つの筋には強い関連があった。患者は華奢な体の内部に住むという別人格の命により多くの犯罪を重ねたとされる。その診察の際、医者の幼い娘が誘拐され犯人は医者を脅迫。テンポ良く進行する物語の最後は、感動の大活劇で終る。2022/11/27
koo
10
先日新刊を読んで懐かしくて再読。主人公の精神科医コンラッドが、解離性同一性障害の殺人犯と目されるエリザベスを診察し語られる現実と妄想の区別がつきづらいサイコサスペンス特有のストーリーが中盤からコンラッドの娘が誘拐され誘拐犯との息詰まるストーリーに一変し予想外の展開、徐々に序盤の伏線が回収されて2つの事件の関連性が明らかになる構成が巧いですね。全編残虐性とエロティシズムに横溢していてこれぞクラヴァンと言える作品だと思います。エリザベスにもう少しフォーカスして欲しかったですが今読んでも面白かったです。2025/02/19
tmctmhs
6
再読。ほぼ忘れてて楽しく読めた。記憶力の無さもたまには役に立つ。キース・ピータースンの別名義というか本名のクラヴァン。ウェルズシリーズも再読中。本作は、思ったより古さを感じず、ちょっといじれば現代の物語として十分通用しそう。肉体的には強くない主人公とエキセントリックな女性のタッグがサイコなイケメンと戦うという構図は最近あったような?と思ったらミスター・メルセデスだ。2022/01/30
優
5
かなり面白かったし、名手と言いたいほど書きかたも上手いのだけど、全編通して感じる薄っぺらさは何なんだろう。アメリカ人作家だから薄っぺらい、みたいなことは感じたことないけど(私はイギリス贔屓なのでそう思うこともあるかなあと自分の感じ方をずっと観察してるけど、アメリカ人の作品だから薄っぺらい、とは感じたことはない。ただ、イギリスの、特に女性の作家は執拗なほど細かく心理や人間を描写する傾向があるけどね)、たぶん、前も呟いたけど、精神病者の苦悩や在り方がどうも説得力がないのが薄っぺらさの原因かなあ?2024/09/16
竜
5
1991年の作品。面白かった。 読み終え振り返るとややご都合主義なところ(昼間でも人目がある窓ならレースのカーテンくらいするのではとか、凶悪な大男が子ども相手に手を焼いてしまう。コンラッドが不死身過ぎなど)はあるし、これだけ楽しませてくれるならいいかな。 2022/12/21
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