内容説明
鬱の病いを持つ青年ジョー。病院から追い出された上に、里親からも見棄てられ、絶望した彼は遂に自殺をはかる。その命を救ったのは、謎のインテリ青年シャンドー。この時からジョーは、彼の服従者になることを決意する。今まで愛された経験のないジョーが、初めて出会った「運命の人」であった…。実は、大富豪夫人ニーナの誘拐を、シャンドーは企てていた。その彼に、ジョーは邪険にされ、冷たく利用されても、盲目的に愛を捧げ続ける。しかし事件は意外な展開へ…。無気味とユーモア、欲望と狂気、悲劇と喜劇が交錯する、異色の力作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
102
誘拐犯たちとその標的になる者たち。この2つの相反するグループには奇妙な符号がある。それは族長に仕える家来、ギャロウグラスがいること。誰しも誰かのギャロウグラスであり、それを生き甲斐にしている。しかし本当に誰かのギャロウグラスなのかを知ることは実は生き甲斐を奪う危うさを孕んでいる。人は誰かを必要とし、そして誰かに必要とされて生きている。そう思って生きている。貴方には必要とされる人はいるだろうか？そしてその人は本当に貴方を必要としているのだろうか？それを知ることは止めた方がいい。それはとても恐ろしい事だから。2020/09/05
hit4papa
40
命を絶とうとしたジョーは、すんでのところでシャンドーに救われる。その日から、ジョーは、シャンドーの従者(ギャロウグラス)としてふる舞うようになる。やがて、シャンドーは、ある富豪の妻ニーナの誘拐を企んでいることを告げるのだった…。ジョーのプラトニックな同性愛に苛められる様が、じっくりと描かれます。一方、ニーナは、過去にあった誘拐のトラウマで神経をすり減らす日々。やもめの運転手ポールとついには不倫関係に。このあたりの心理描写も秀逸です。誘拐する者、される者、そして二人の従者の運命は。ホントに著書はお人が悪い。2023/11/29
きりぱい
4
誘拐を企てる側と標的にされた側の動静。過去の誘拐事件が招く皮肉な運命は、まさかの唐突に、さらっとショッキング・・。2010/10/23
nightowl
2
自殺を図ろうとした鬱病のジョー。すんでのところで彼を救い出したシャンドー。ジョーはシャンドーのために従属することを誓う。そんな折、シャンドーの計画した誘拐の顛末は。一方、二人が攫おうとしているニーナのボディーガード役、ポールは日に日に女主人に恋する気持ちを高まらせていたが・・・ジョーのシャンドーへの思慕と子供じみた（よく言えば純粋な）考えが綴られた部分で好き嫌いを分けそう。それぞれ人に尽くそうとする思いが痛々しい。残り少なくなったところで非情さが急に発揮されるので戸惑ってしまった。2010/04/04
