内容説明
夫をはじめ、男に対して嫌悪と恐怖しかおぼえない女。彼女がはじめて知ったひそかな悦び、そして唐突に襲う思いもかけぬ破局―(「女ともだち」)。女性ならではの観察力で、日常と人間心理の襞にわけ入り、正常と異常の境を鋭くつく、現代ミステリーの第一人者レンデルの第3短編集。アメリカ探偵作家クラブ最優秀短編賞に輝く表題作「女ともだち」ほか10編を収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
113
純文学に寄り掛かったミステリが多いように思える。人間の心が思いもかけない行動を起こす内容が多いと感じた。それは各編が男と女の関係の纏わる皮肉な結末を扱っているからだ。全ての作品に共通するのは錯覚であれ、疑問であれ、懸念であれ、最初はほんの些細な火種に過ぎない事だ。それが各人の心の中で肥大し、暴走し、そして取り返しのつかないほどまで成長する。そして過ちへと繋がる。それは我々一般読者でも抱くような小さな火種で決して他人事ではない。つまり日常と非日常の境は斯くも薄い壁で遮られているのだということ思い知らされる。2020/09/08
星落秋風五丈原
22
表題作何か見たことある…と思っていたら映画「彼はひみつの女ともだち」の原作でした。怖い!2021/03/15
bapaksejahtera
18
①女ともだち ②ダーク・ブルーの香り ③四十年後 ④殺意の棲む家 ⑤ポッター亭の晩餐 ⑥口笛を吹く男 ⑦時計は苛む ⑧狼のように ⑨フェン・ホール ⑩父の日 ⑪ケファンダへの緑の道 からなる。レンデル短編集翻訳の最後で、3つの傑作集の中で本書が一番良かった。いずれも登場人物に狂気が昂じた末の破綻や犯罪が主題。甲乙つけ難いが③⑤⑥⑦⑩がより印象強かった他、⑪は売れない作家の念が友人に残した幻想譚で、舞台の位置関係が(肝心の所だが)理解しにくいものの面白かった。レンデル晩年の長い作品と異なり久々に堪能した。2025/07/02
くさてる
17
短編集。ミステリのようでいて純文学のようでいて。そんなジャンル分けなど無意味に思える、物語に漂う暗さと、人間心理の危うさを巧みに表現したストーリーに酔った。超自然的な設定と思いきや…まさかの単純な物理的事実と人間心理の関係に迫った「殺意の棲む家」、こんな奇妙で醜悪で、でもたまらなく魅力的な物語、読んだこと無い!と溜息が出た「狼のように」のニ作が飛びぬけてお気にいりだけど、レンデルの短篇をもっと読もう!という気にさせられた表題作「女ともだち」も大好きです。私はこれ、とてもせつなくて哀しいお話だと思う…。2015/09/25
メルコ
12
病院の待ち時間に手にして、少しずつ読み進んだ一冊。11編の短編を収録。表題作は男に対して嫌悪を抱く主婦が、友人の夫に女装趣味があることを知り、仲良くなっていくが…。「殺意の棲む家」「口笛を吹く男」「父の日」が印象に残った。あまりに翻訳くさい文章のものがあり、ちょっと閉口した。2024/11/11