内容説明
高名なフルート奏者、マニュエル・カマルグの死に特に不審な点はなかった。老人は雪の夜、池に落ちて溺死したのだ。だが、カマルグの再婚相手と決まっていた女性の話を聞いて、ウェクスフォードの考えは一変した。死の直前、１９年間生き別れになっていた一人娘がカマルグを訪れたが、彼は対面後、娘を偽者と断じ、追い払ったという。そして今、その娘はカマルグの大邸宅に移り住み、着々と遺産の処分を進めている。娘は本物か偽者か？そこから始まった捜査は、ウェクスフォードをアメリカとフランスへ導き、ある“罠”の発見に結びつくのだ…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
50
ウェクスフォード警部11。著名な老音楽家の不審死の謎を追う警部の活躍が描かれます。容疑者は19年振りに再会を果たした娘。怪しさこの上ないのですが、なかなか確たる証拠が掴めず読み進めながらジリジリします。本作品は、警部と警部の妻ドーラの仲睦まじいカリフォルニア旅行の様子が描かれます。妻のご機嫌を取りながら、渡米していた容疑者の足跡を辿る警部。そして、新たな殺人が…という展開。幻惑されつつも、真相はそこか！真犯人は何と！です。シリーズがマンネリに陥らないための苦心作でしょうか。意外さという点では楽しめます。2023/03/02
Tetchy
12
本書の謎は相続人の前に突如現れた音信普通だった近親者は果たして本人かという物。この手の話は古くからあり、例えばカーの『曲がった蝶番』とかがそうだし、また財産目当ての悪女物となればアルレーの『わらの女』が有名だ。あれが当事者の側から描いたものとすれば、これは捜査側から描いた悪女物と云えるだろう。そして本物か偽者かという二者択一でしか有り得ないシンプルな謎の真相が実に意外かつ実に納得の出来る物であることに驚いた。こういう状況って確かにあるよなぁと思わせ、それを謎に結びつけるのがレンデルの上手さだなぁ。2012/01/10
bapaksejahtera
11
シリーズ11作目。主人公警部の次女が結婚を迎え、婚約の広告を夫々の教会で行う等、結婚に至る様々な家庭の出来事を背景に小説が進行。管内に住む栄誉勲章を授与された高名なフルート奏者がある夜不審死を遂げる。当初は事故として処理されたが、彼の若い婚約者が事件性を主人公に訴えたのが事件の端緒。例の如く平穏を望む上司からの反対を受けつつ、主人公は遺産狙いの殺人と見て、遠く米国やフランスまで足を伸ばす。複数人の絡んだ大掛かりな事件と思われたが、最終的には単純な行きがかりを背景とした犯行との種明かし。やや肩透かしだった。2025/02/06
shiaruvy
8
【S63.06.25 初版】 レンデルさんの訃報聞いた時, どうか長生きされてくださいと, 大好きな訳者の眞理子女史のことが頭に。。。 コメントあとから 2015/05/06
ネフスキー大通りの秋
2
私としては、久しぶりのウェクスフォード警部で、珍しくメモをとらずにサラサラ読めたレンデル作品。登場人物がそんなには多くないので、読みやすかった。複雑なからくりと思わせて、実は……という種明かし、私には面白かったです。2016/08/14
