感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
118
変わらぬ日常が繰り広げられるはずだったところに突然転機となる事件が起こったら、貴方はどうするだろうか?人生に“もし”はないが、本書はその“もし”の連続の物語だ。この“もし”の選択肢の中で我々は生きている。その選択肢の1つを選び間違えたが故の歩むべきでなかった人生の道筋。平凡な毎日は選択を一歩間違えばこんな悲劇が待っている。心にずっと痛みが残るような出来事はちょっとしたタイミングや心に差す魔によって起こる。皮肉に満ちた作品だ。最後にある有名な曲の一節でこの感想を結ぼう。「誠実さ、なんて寂しい言葉なんだろう」2019/09/15
hit4papa
58
日常生活に飽いた銀行員が、突然現れた強盗に乗じて金を盗み、逃避行をして別な人生を歩もうとします。突破的に大それたことをしてしまった小市民。そんなに世の中甘くないのは想像に難くはありません。金を手にしたことで、苦悩の方が勝ってしまうのです。強盗、銀行員のそれぞれの思惑が外れ、打開を試みればみるほど負のスパイラスに陥る過程が面白いですね。皮肉極まりない決着の付け方は、レンデルならではのどんより感が漂います。そもそもの発端となった強盗の二人組みの、近親憎悪とも言うべき、掛け合いがいい味出しています。2021/08/20
bapaksejahtera
15
「わが目の悪魔」「ロウフィールド館の惨劇」と続くノンシリーズ8作目。支店長と行員だけの小さな銀行に、二人組強盗が入る。彼らはありふれた出来の悪い若者で、昼休み居残った女子行員を無謀にも人質にして、一方の泥棒の住んでいるアパートに逃げ込む。他方支店長は銀行の現金を密かに私物紛いに玩弄する楽しみに耽るうちに事務室で事件に遭遇。偶々秘密の趣味を楽しんでいた現金を拐帯、逃亡する。二組の逃亡劇が小説の内容。如何にもありそうな愚か者達の場当たりの行動が、どう終末に至るかが見せ場。大きなドンデン返しはなくとも楽しめた。2025/03/12
Ayah Book
13
レンデルさんのノンシリーズ。銀行強盗にまつわる犯罪小説なんだけれども、内容は心理サスペンス。舞台はイギリスですが、60年代フランス映画のような雰囲気。おしゃれ、そして悲しい愛の物語。最終章でうまくパズルがはまってしまうところが、意地悪だけどいかにもレンデルさん。2021/02/15
おくちゃん
9
他のレンデルの作品とは趣が異なる。作品としては悲劇ですね。救われた人はいないかな。2020/06/19