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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
138
厭なミステリを書く作家だ。最初にネタバレさせておいて、それに至る過程を描く。それを読むのに耐えられないが、幸いにも文章が軽いから(訳者のおかげ)、ささっと読み終えた。イギリス文学のブラックユーモアは好きだけれど、これは粘ついた黒いコールタールみたい。汚くて、汚れを取ろうとしても容易には取れない。だから、もう、この人の作品は読まないことにしよう、間違って手に取らない限り。2017/09/05
遥かなる想い
98
冒頭から、いろいろ明かしながら、最後まで読者を離さない筆力はたいしたもの。タイトルが少し古めかしいか。 2010/05/12
セウテス
79
「ユーニスが一家を殺したのは、読み書きができなかったためである」 この衝撃的な文章で始まる倒叙サスペンス。犯行動機や殺害方法は、最初から明らかである所に本作の特徴がある。物語はシンプル、ロウフィールド館に召使として雇われたユーニスが、その結末に向かってジリジリと近寄っていくだけの話。しかし読者からすれば結末が解っているからこそ、「そちらを選んでは駄目だ」という叫びを起こさせ、また回避出来るのではという希望を持たせる。作者の構成の匠さ、読者への企みの精密さに下を巻く。人によって様々な思いを、引き出すだろう。2017/02/18
NAO
78
殺人者も、その理由も冒頭に記されている。なのに、読み進めずにはいられない。戦時中の騒乱の中で基礎教育を受けることなく大人になってしまった女性の悲劇は、避けることのできないものだったのか。彼女の秘密に気づかなかった雇用主のスノビズムも、なんともいえない。2020/08/31
Tetchy
77
これが噂の、という期待感で臨んだ本書。冒頭の有名な一文から全てを聖ヴァレンタイン・デイの惨劇へと収斂させていく手並みは見事。日常の、本統に何気ないアクシデント、例えばTVの故障などが文盲であるユーニスにとって狂気へ駆り立てる一因となっていく事を実に説得力ある文章で淡々と述べていく。そして事件後の真相に至る経緯も、事件前に散りばめられた様々な要素が、単純に真相解明に結びつかない所が面白い。運命を弄ぶレンデル、そして“怪物”を生み出したレンデルに拍手を贈りたい。2009/01/31
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- 和書
- 幽霊法廷 文春文庫