内容説明
その年、マクレディは外交官を装い、カリブ海の英領バークレー諸島を訪れていた。まばゆい光にあふれるその島は、一見、平穏そのもののように見えた。が、島はイギリスからの独立をひかえ、独立反対運動と初代首相の選挙戦で揺れていた。そんななかで、マイアミから休暇で釣りに来ていた刑事が突然消息を絶った。さらに、現職の総督が何者かに暗殺された。二つの事件は何か関連があるのか、総督はなぜ殺されねばならなかったのか。“外交官”マクレディは騙し屋の本領を発揮して、真相の究明に乗り出した―。雄々しく闘ったスパイたちに捧げる鎮魂歌。マクレディ・シリーズ4部作完結編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
50
“DECEIVER”の最終回。副題は”A Little Bit of Sunshine"。和訳が『カリブの失楽園』。原題の直訳は「僅かな陽光」なのに、なぜ『カリブの失楽園』なのか。それは物語の舞台がカリブで、”A Little Bit”は、努々(ゆめゆめ)と訳せる。努々は「決して・断じて」といった(後に禁止を表す語を伴う)意味や、「少しも・まったく」など(後に打消しの語を伴う)訳せる。また“Sunshine"には、「(不幸・退屈な)喜び・楽しみ」とも訳せるので「全くの楽しめない」、つまり『失楽園』となる。2015/12/07
ひねもすのたり
12
マクレディーシリーズ最終作の舞台はカリブ海に浮かぶ小島。 謎解きミステリー的な側面が強くて読みやすくなっていますが本格的なスパイ小説を期待するとハズすと思います。 ただOSSやらSOE(第二次世界大戦中の特務機関)を出してくるあたりは「陰なる世界で人生の大半を過ごした人たちに捧げたい」としたこのシリーズの真骨頂かもしれません。★3 シリーズ★4.5 2020/09/01
bapaksejahtera
10
マクレディ・シリーズ四部作の完結篇。東西冷戦の終結と共に用済みとなった英国秘密情報部の主人公は、4回に渉って開催された彼の馘首に抗弁する聴聞会に列する。今回はカリブの海外領の独立を巡り暗躍するカストロと麻薬カルテルの策動を防ぐというテーマ。最後の作品だから、バハマの先の小さな島嶼がモデルだから、と軽んじたわけではなかろうが、本作は前作群に比べ、如何にも安直で軽々しい活躍の末に最後にサッチャーまで登場させる。少しお遊びが過ぎる。消えていくスパイとしては、最後の最後にチャーリーマフィンの方に同情が移った。2021/05/13
J・P・フリーマン
10
首相選挙のまっただなかのイギリス領バークレー諸島で殺人事件が発生し、休暇で訪れていたマクレディがかかわっていくことに。これまでの三作は緊張感あふれるスパイ小説だったのに対して、南国の雰囲気を反映してかコミカルな感じでストーリーが進行。首相選挙のうらに隠された陰謀をマクレディが華麗に暴き出す。エピローグでは、時代は変わってもスパイは不滅ということが示唆されています。マクレディの功績を振り返る全四作のシリーズとなっており、上質な長編集ともいえる作品でした。2020/06/28
チャオ
3
場所がカリブだけにフォーサイスにしては明るい文章で物語が進んでゆく。本の内容は別にして何故、現在フォーサイスが読まれていないのだろうか。過去の時代の物語ではあるがその内容、リアリティーは今の時代の作家が見習うべきであり、また警察ものが好きな読者には好きな作家と読み比べすべきと思う。もっとフォーサイスを知ってほしい。2014/06/20
-
- 和書
- 燃えよペン MF文庫