内容説明
1941年12月のその日、ハワイ、スコーフィールド兵営はいつもと同じ1日を迎えた。ただプルーイットの姿はなかった。彼はすでに殺人を犯し、兵舎を脱走していたのだ。静穏は日本軍機の飛来によって破られた。屋根をかすめるようにして飛びながらくり返される機銃掃射。真珠湾攻撃である。そしてその報に接し、隊に戻ることを決意したプルーイットには、ある皮肉な運命が待ちかまえているのだったが―1兵士の軍隊との対決を軸に、軍という組織の醜悪さを余すところなく描破した、第二次大戦を描く記念碑的名作。全4巻完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
59
生活の基盤がないプルーイットにとっては、軍隊だけが、彼を合法的な市民として認めてくれる場所だった。だが、彼の強烈な自意識は、その唯一の居場所である軍隊では邪魔にしかならない。唯一の居場所が軍隊だったというのに、そこは、自意識が強く自分の意思を曲げようとしないプルーイットのような人間がいるべき場所ではなかったという、どうしようもない矛盾。それでも決しておのれを曲げることをしなかったプルーイットの姿は、痛ましいとしか言いようがない。だが、そこまでしておのれを貫こうとする彼の姿は、⇒2017/11/07
takeakisky
0
メンターのマロイとの別れ、釈放、帰隊。プルーイットの起こした事件、AWOL。かなり滑稽なウォードンの爆発。プルーイットの消極的戦い。ただし何を相手にか。無為に見える死。解き放たれるウォードン。ただしゆっくりと。予備役将校の投入による陸軍の組織改変。去り行く老兵ピート。その不思議な気概と理解するウォードン。読んだことのないトーマス・ウルフ。読みたくなるジャック・ロンドン。プルーイットの人生との交わり。何も変わらなかったようで、少し変わったそれぞれの生き方。不思議と晴れやかな気分。モダンライブラリの100。2024/08/28