内容説明
1941年2月、ハワイ、スコーフィールド兵営。真珠湾攻撃の予兆はいまだどこにもなく、兵営ではごく日常的な軍隊生活が営まれていた。軍隊もまた一つの社会である。そこで優先されるのはまず隊の名誉であり、たとえばボクシングの対抗試合に勝つことが、一般社会と同様、そこにも様々な人間がいる。有能と能率の権化の如き曹長もいれば、兵舎で賭場を経営する者もいる。この機構に敢然と反旗を翻した若きラッパ手、プルーイットの目を通して、軍隊の非人間的側面をあますところなく描き、第二次大戦が産んだ記念碑的作品とされる名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
56
1941年、ハワイ、スコーフィールド兵営。まだ戦争の影が見えない軍隊は、濃密すぎるほどの社会の縮図だ。プルーイットの目を通して描かれる軍隊という格差社会が、生々しく描かれていく。エゴをむき出しにしてはばからないプルーイットは、隊の移動希望を出したことによって、新しく赴任した隊でかなり厳しい立場に立たされるが、そこでもがんとして自分を曲げない彼の姿勢は、ただ単に強情というだけでなく、人間の在り方そのものを考えさせる。2017/11/01
takeakisky
0
タイトルはキプリングのGentleman-Rankersの最後の連から。取るに足らない従卒の辛さ愚かさ。戦争が終わって20年ほど。オアフ島スコフィールドバラックス。平時が長く続き、軍紀はあってなきが如し。プルーイットの好ましい屈折。まだ21だ。スポーツが決める下士官の地位。佐官の非人間性。陸軍という鋳型に読み手の頭を合わせ固めるための長い長い導入部。多くの登場人物。それぞれの事情。ただ、平時。それなりの寛容さと平衡がある。どこを切ってもアメリカ陸軍文学。第二部の最後で、やっとぐっとくる。素晴らしい幕切れ。2024/08/24