内容説明
私は都会の屋根裏部屋で暮らす貧しい絵描き。ひとりの友もなく、毎晩寂しく窓から煙突を眺めていた。ところがある晩、月が私に語りかける―僕の話を、絵にしてみたら。それからいく晩もの間、月は私に、自分が見てきた世界の物語を話して聞かせるのだった―。旅を愛したアンデルセンが自らの体験をもとに、ヨーロッパからインド、中国、アフリカへと、読書を豊穣な想像力の世界に誘う傑作連作短編集。
著者等紹介
アンデルセン,ハンス・クリスチャン[アンデルセン,ハンスクリスチャン][Andersen,Hans Christian]
1805‐1875。デンマークの小説家。フューン島の貧しい靴屋の息子として生まれ、学校にもあまり通わなかった。しかし、早くから文学に親しんだ読書好きの少年は、舞台に憧れ、故郷をとびだす。以降、各地をさすらいながら筆をとり、近代童話の確立者となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マンセイ堂
29
物語は、月の目線で語られます。様々な国の夜を旅した月が、自分の見てきたことについて、絵かきに話します。本の終盤で、小さい女の子が「日々のパンを与えたまえ」とお祈りした後「出来ればパンにバターもたくさんつけてください」と付け足した所はいいなと思いました。2013/07/13
とめ
25
月のお話は絵本さながらの美しい語りで、時間に囚われないものばかりでしたが、ものがたりを全て読解できるほどの容量が私の頭には今現在ないなと感じさせられる本でもありました。旅を愛したアンデルセンの生涯が後半に載っていたのでこちらの方を先に読んでから物語を読んでもいいかなという感じです。月が中国で見た話が個人的に好きでした。2014/11/24
シュラフ
23
子どもの頃にはアンデルセンの『絵のない絵本』というのはなんとつまらない本だろうと思っていたのだが、大人になって読んでみるとすごく素晴らしい。月が語る各地での出来事の多くがどれもみな哀しくて、そして切ないほどに美しい。大人になるということは、人生の哀しさというのを知ることであり、一方でその美しさも知るということなのだろう。晩年のアンデルセンは「わたしの一生は、ゆたかで幸福でした。それはまるで美しい童話そのものです」と言った。いくたびかの失恋で一生独身を貫いた彼が幸福だったとは思えない。夢見る詩人であった。2016/02/13
くろうさぎ
18
新潮文庫の方を読んでからの本書でしたが訳者の違いで随分印象が変わります。それでも全編を通して漂う哀しいけれど美しいお話は、どれも良くて大人にこそ響く作品だと思います。表紙の絵のように、月はいつだって私たちを優しく見守ってくれているのですね。最後に書いてあるアンデルセンの伝記もまた良かったです。2018/09/19
あうる
18
謂わば文学の体裁を取った美術。絵本とは何故に?と毎度引っ掛かっていたが、頭の柔軟な子どもが読むと云う意味でなら納得。想像力が乏しい時に読むと勿体無い。2014/04/23