出版社内容情報
名訳で甦るドストエフスキーの代表作。その年、ペテルブルグの夏は暑かった。大学を辞めた、ぎりぎりの貧乏暮らしの青年に郷里の家族の期待が重くのしかかる。この境遇から脱出しようと、彼はある計画を決行するが……。
ドストエフスキー[ドストエフスキー]
著・文・その他
米川 正夫[ヨネカワ マサオ]
翻訳
内容説明
次第に追いつめられていくラスコーリニコフの前に現れた年若き娼婦ソーニャ。彼女の清らかな魂に触れ、物語は新たな天地へと向かいはじめる。息もつかせぬ展開、緊迫した心理描写、個性豊かな人々が織りなす濃密な人間模様に彩られた世界最高峰の文学を、ロシア文学の大家、米川正夫の名訳でお届けする。
著者等紹介
ドストエフスキー[ドストエフスキー][Досто´евский,Фёдор М.]
1821年、モスクワに生まれる。19世紀ロシア文学を代表する世界的巨匠。矛盾に引き裂かれる人間を描き世界の文学・思想に多大な影響をあたえる。『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』などの大作を残すいっぽうで、繊細で叙情的な作品も描いている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shinobi Nao
21
長かった~。何度も挫折しそうになりつつ、ところどころ話の筋を見失おうが「とにかく最後まで読む」ことを目標に、どうにか読み切った。この作品がこんなにも世界中で、そして長きに亘って「名作」とされている所以はまったくわからない(そこまで読み解けていない)し、今は長かった苦しみからの解放と読み終わった達成感しかないが、難産の直後に「もう一人産みたい」と思う母のような気持ち(知らないけど)で、一生のうちもう一度くらいは読んで、次はもっと物語にどっぷり入り込んでみよう、なんてことを思っている。2016/06/09
東京湾
16
「僕はおまえに頭を下げたのじゃない。僕は人類全体の苦痛の前に頭を下げたのだ」追い詰められ錯乱していく精神の果て、ラスコーリニコフは愚純なる狂信の娼婦ソーニャの姿に道を見出す。この物語の根幹を成すものは『信仰』だと思う。富であれ貧であれ人間はただの人間としてしか存在し得ない。そこで初めて罪と罰が問われるのではないだろうか。深遠な一大巨編であり一級のサスペンスでもあり、緻密な心理描写に息をのむ、本当に面白い小説だった。スヴィドリガイロフの最期など個人的に不明瞭な部分も多いため、いずれ別の訳でも読んでみたい。2019/09/22
sashi_mono
14
上巻はチビチビと舐めるように読み進め、下巻は淀みなく一気呵成に読破した。おもしろかった。作品を執筆した時期が江戸時代の末期というから驚いてしまう。つづけて、プーシキンの『スペードの女王』を読めば、この作品との共通項がうかがえますよー。2018/07/09
ゲンショウ
14
上巻で一時挫折していましたが、機の熟しを感じたので、下巻拝読。登場人物一人一人の造形が詳細で且つ濃密で、大変苦労しました。持論ですが、物語を紡ぐ事は自身の心の中を晒す行為だと考えます。著者の人生の記憶を垣間見た思いです。人は罪に生かされ、罰に救われるのでしょうね…その形は人それぞれですが。2012/01/10
くみ
13
圧倒の一言に尽きる。登場人物たちは感情を抑えた次の瞬間、爆発、暴走する。特にカチェリーナ。暴走する彼女にはこちらも引きづられそうで怖くなった。彼女が義娘のソーニャを娼婦にさせて生活してるというのもあるのだけど。。読了してラスコーリニコフについて。彼が犯行後苦悩するのは罪の意識からではない。「高潔な」自分が「下等な」老婆を殺しても罪ではないという自論が通用しない事実に自尊心が傷つけられたのだと思う。でも彼は困っている人に手を差し伸べるような人だ。「自尊心」や「信仰心」のあり方を問われているような気がした。2017/10/28