感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
80
文学にも思想にも門外漢の吾輩の安直な表現をすると、奇妙奇天烈な作品である。神秘思想の極み。 主人公は両性具有者。敢えて言えば未来的な作品かもしれない。2023/08/21
misui
11
人間を超越した存在である両性具有者セラフィタが一組の男女に天へと至る道を説く…という大筋はあるものの、実際は登場人物の口を借りてバルザックがスウェーデンボルグゆずりの神秘思想を開陳するものだった。わけがわからないままに適当に読んでいたらセラフィタが昇天を始めて視界が光に包まれてさらにわけがわからない。旧字なのも読解の困難に拍車をかけるので、いつか別の版で再挑戦したいところ。2016/03/13
twinsun
8
バルザックの神曲。人間が自然的なるものと霊的なるものとの結合の手段であると信じ、知性によって無限なるものを考える人間は、その無限なもののすべてを扱うことはできないことを人間の限界として、苦しむこと、信ずること、愛すること(スウェーデンボルグのすべて)が『信仰承認』(神は誰にでも取りなさいという)を支えているということか。基礎知識なく読み進めてベルナノスの神がかり的な展開どころではなくベアトリーチェの降臨のような物語であった。2022/03/21
kinka
7
両性具有の麗人セラフィタ=セラフィトゥスを巡って展開する、男と女と神様を巻き込んだ、何角形だか分からない修羅場を描いたバルザックの神秘小説。この人、本当に凡そ何でも書いている人なんだなあと思う。この世の価値観だけで満足できなくて、彼岸の悦楽まで見据えている。確かに霊魂には性別なんて無いんだろうけれど。肉の快楽より信仰の法悦のほうが気持ちいいのかしら。ただ、男は女を、女は男を愛するものであるという前提で話が進むのは頂けないわ。時代的なものもあるんだろうけれど、この人は怪物ヴォートランを生んだ人なんだから。2017/01/28
H2A
7
世評好ましくない作品で確かに読みづらく、スウェーデンボリの教説が鏤められた難解で退屈な説教が大半である。そこが好悪を分ける。駄作との説にも一理ある。しかし終末近くでは幻視される天界を読めば、バルザックの桁違れに巨大な想像と描写に圧倒されてしまう。これに比肩するとすればユゴーの『諸世紀の伝説』の中にしかない。ミルトン『失楽園』以来の傑作。
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