内容説明
混迷する時代の中で、弾圧と迫害をくぐり抜け、新しい価値創造者となった日蓮。その強烈な個性と実践力で打ち立てられた「山川草木悉皆成仏」という思想は、また日蓮を信奉した宮沢賢治の思想でもある。この仏教的自然観は、21世紀における人類の世界観になりうる壮大な思想であり、日蓮がめざす「久遠実成」「永遠のいのち」の生命論である。
目次
第1部 典型的日本人日蓮(この本を読んでくださる人々に;安房から鎌倉へ;神々にうながされる者;流人の国佐渡へ;佐渡御書;即身成仏)
第2部 日蓮の思想と行動(紀野一義;梅原猛)
第3部 日蓮の人生と思想(価値復興者日蓮;価値創造者日蓮)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
no.ma
14
仏教の思想シリーズをなんとか読了。荒行でした。正直に言えば目を通しただけの巻もあります。そして、シリーズの締めくくりは日蓮。法然の念仏に対しての敵対的な側面と「手紙」に見られる愛情を併せ持つ、とにかく熱い人でした。国のため民衆のため、自分の信念を貫き通します。今日では『法華経』だけでなく大乗仏教そのものが釈迦の仏教と同じものではないと分かっています。それでも、すべての人間が成仏する教え、平等慈悲の教えには救われます。仏教について、あるいはこの世がいったいどうなってるのか、もっと学んでいきたいと思います。2023/05/13
roughfractus02
8
減・道の理想的二諦に集中した道元を扱う前巻を受け、本巻は苦・集の現実的二諦を負う日蓮を追う。中国天台の『法華経』解釈に釈迦の全精髄(正法)を見る日蓮は、法然の口称念仏を批判し、天台の「一念三千」思想を応用して、『法華経』の「題目」(南無妙法蓮華経)を称えれば全仏典を称えたことになると説く。他者救済のない小乗も仏と認める「二乗作仏」を『法華経』の現実肯定と捉える日蓮は自らも国家と力を肯定する。この肯定は、仏陀を歴史的人物でなく永遠の仏の表れとし、どんな現実の苦難にも現れるとする情熱的信心をその原動力とする。2021/05/05
masanari
2
1章は作者の仕事が突然舞い込んできたと弁明するところから始まる明らかに未完成なエッセイ。日蓮の生涯を辿るというよりも日蓮の書物を長く載せてその書物が誰に何の目的で書かれたのかを作者が説明する構成。200ページという制限を考えず引用しまくった結果日蓮の晩年の記述はなあなあに終わってしまう。肝心の引用も日蓮のバイタリティと誰が彼の敵だったかはわかるが、日蓮の思想自体は(なぜ南無妙法蓮華経と唱えると救われるのかは)最後の20ページに駆け足で載っているのみ。2019/12/20
Yoshi
1
仏教の思想シリーズ最後の日蓮。 読むという事は、本に目を通す事ではなく、、みたいな厳密なそれではなく、まさか全部読めるとは思わなかった。 日蓮の印象は苛烈な民衆への比重や、反骨精神あふれる印象で、大乗という意味合いでこの人が熱烈に支持される理由がどことなしか理解できた。 宮沢健二の日蓮宗への傾きのようなものをミュージアムで見ており、なぜそこに傾いたのか断片的に理解できたような気がした。 とはいえ法華経自体はまだ内容がほとんど理解できていないので、次は経典を読んでいきたいと思っている。2024/04/03
悠里
1
日蓮の人となりが分かる入門書です。仏教の教義的な解説は薄い。 日蓮の思想遍歴を、日蓮自身の言葉を当時の時代背景に照らしながら踏み込んで考察されてます。 三枝先生の説から、日蓮の思想的独自性は、法華経=法に帰依するという発想にありと思ってました。 梅原先生の歴史哲学による実践仏教の深化の発想は、大変勉強になりました。2013/08/07
-
- 和書
- 入門国際機構