出版社内容情報
梅原 猛[ウメハラ タケシ]
著・文・その他
宮坂 宥勝[ミヤサカ ユウショウ]
著・文・その他
内容説明
「弘法さん」「お大師さん」として親しまれている弘法大師空海は、わが国を代表する宗教家、思想家である。密教ブームといわれる現代、改めてこの偉大な宗教家の人生と思想を見直さなければならない。死の哲学から生の哲学=生の肯定へと、その五色に輝く真言密教の「生命の思想」「森の思想」「曼荼羅の思想」こそ、宗教のあるべき姿が求められる現代、もっとも大きな意味をもつものであろう。
目次
第1部 秘密の世界(空海の生涯;密教とは;曼荼羅の世界;人間精神の発展;自己を完成する;密教のシンボリズム;密教をめぐって)
第2部 密教の再発見
第3部 死の哲学から生の哲学へ(偉大なる矛盾の人生;生命の秘密と知恵の秘密)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
6
ダイナミックに展開する顕教(大乗)の傍で、密教も秘密の教え(真言)を伝えることを旨としてインドで生まれ、中国を経て日本に辿り着く。異なる文字を媒介に大陸を渡る仏教は、仏陀の言葉も象徴として捉える解釈学的な密教を生み、その向こうにある曼荼羅宇宙を構想する。本書は文字から発想する空海の特質を語り、曼荼羅の中心に据えた大日如来をミトラ教等の民族宗教の太陽神中心の宇宙観と比較する。その中で著者達は空海の思想に死の宗教である仏教を生へと転回させる華厳的面を取り出し、「即身成仏」に向けた修行の修験的土着性に注目する。2021/05/02
Go Extreme
2
密教≒生命と欲望肯定→悟りを得る 即身成仏:ー肉体そのものが仏の顕現 生と肉体の肯定 顕教と密教:顕教は悟性で理解・密教は象徴的で直感的 大日如来の象徴性ー物質的な美 三業の働きー身・口・意 肉体性と官能性の肯定 欲望の浄化: 象徴的表現の重要性 自然との一体化: 禁欲と快楽の調和 三界の教えー欲界・色界・無色界の存在とその超越 金剛界と胎蔵界の和合ー男性原理と女性原理・知恵と慈悲 十住心の教え 菩提心 五戒と十善戒 曼荼羅の象徴性ー宇宙の調和と存在の本質 真言の力 密教の即効性・生命観 生と死の一体性2025/01/09
マウンテンゴリラ
1
本書の中でも少し触れられているが、私自身も近代以降の仏教思想家の中で、最も偉大な人物と見る鈴木大拙の影響からか、鎌倉新仏教が日本独自の仏教の始まりであり、更に言えば日本人の精神文化の確立の基であった、と認識する面が多分にあった。そのため、仏教における密教の位置付け、及びその創始者と言える空海に関しては、相対的に注目度が低く、教科書的に、古代日本の貴族仏教、国家仏教の代表者と認識する向きが強かった。しかし、本書を離れても最近、空海への注目度が上がっているということは、漠然と認識しており、そんな折に→(2)2023/11/18
ハヤカワショボ夫
1
鎌倉仏教と比べ、特に密教は廃仏毀釈、神仏分離で打撃を受け衰退した。現在の密教再認識のきっかけとなった梅原学における空海論を読んだ。第1部宮坂氏の密教思想一般の解説、第2部梅原・宮坂対談、第3部密教について梅原論となっている。近代以降その”偉大な矛盾=万能さ”から知識人から誤解を受けてきた。釈迦仏教の”死の哲学”から密教は”生の哲学”へ展開し空海は理論、体系化した。密教は「世界は全てを認識し尽くせないもの」と捉え、この深い謎への畏敬と同時にこの謎に挑戦する人間の知に対して肯定するものとしている。【家】★★★2015/09/04
sikamo
1
「この煩悩の世界に永遠のイエスを言え。」の一句に痺れた。梅原猛先生はもちろん優れた学者であり思想家なのだろうが、それ以上に一級の文章家だと思う。最澄と泰範をめぐるエピソードはその筋の人(げんしけんの歴女の子とか)にはたまらんものがありそう。2015/05/30