内容説明
一八九五(明治二十八)年、今から百年前、フランスのリュミエール兄弟が映画〈シネマトグラフ〉を発明した。映画は、20世紀の娯楽と文化の世界をまたたくまに席捲した。スクリーン上にあらゆる冒険が、愛が、青春が描き出され、悲劇喜劇が演じられた。創成期の制作者たちの実験的精神と同時代の芸術家たち。舞台は日本へ、上海へ、釜山へと移る。日本映画界きっての博識をうたわれる監督・内藤誠が、映画百年の舞台裏を逍遙し、その事件簿を軽妙に綴る。
目次
第1章 リュミエール兄弟と『明治の日本』
第2章 遺欧使節とナダール写真館
第3章 メリエスと『月世界旅行』
第4章 海の星(ひとで)の余光
第5章 上海のジャズと映画、そして魯迅
第6章 ラヴィ・ド・ボエーム
第7章 背影(おもかげ)・父の「問題」
第8章 『海游録』と『釜山港に帰れ』
第9章 お濠端にてウェイリーを想う
第10章 戦後映画少年のみたサローヤン
第11章 ジャームッシュ、その唐突な旅立ち
第12章 コーエン兄弟、その映画的奇譚の魅力
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいとや
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タイトルに「事件簿」と謳われてはいるが、スキャンダルだの事件だのは全くと言って良い程出てはこない。強いて言うなら序盤のリュミエールからメリエスまでの「映画の誕生」こそがそれにあたるだろう。それ以降は、時代の流れと共に流れていく映画を絡めて、様々な人物の人生が語られる。中には申維ハンのような、著者が「映画化したら面白いだろうなぁといまでもわたしは思っている」程度の関連で語られるエピソードなどは些か牽強付会で面白い。その後の韓国映画の歴史と現在、で充分な所をどうしても語ってしまう筆者の息遣いが魅力的な一冊。2023/07/10
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