内容説明
“紐育”という文字が似合う古めかしいバーに、鮮やかなドライ・マティーニをつくるトマというバーテンダーがいた。ミキシング・グラスをかっちりと冷やし、オリーブやビターを一切加えない紐育スタイルのカクテル。あの味が忘れられず、再び摩天楼にやってきた私。だが、そのバーにはもうトマの姿はなかった…。ジャーナリストとバーテンダーとの寡黙な交流を描いた表題作ほか、ジャズ、映画、カリブ海などを背景に、２０種類のカクテルを通して人生を深く味わう掌篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kajitt22
22
カクテルにまつわる、少しセピア色の物語。カクテルというと、バハマ島ビヒミのヘミングウエイが正午を過ぎると飲んだフローズンダイキリ、私立探偵フィリップ・マーロウが午後５時に飲むギムレット、「アパートの鍵貸します」のマティーニなどが頭に浮かぶが、それも含めて２０種類のカクテルが味わえる。解説の五木寛之が６０年代後半の雑誌「ＮＯＷ」に言及しているのがうれしい。本棚の奥を探索、ひっぱりだして再読。2018/06/12
三島ゆかり
3
タイトルにある“20”という数だけのカクテルと、それらに纏わるはなしが、ぎゅぎゅっと濃縮還元されて詰まってます。短編という性質上、満腹感は得られないかもしれないけれど、カクテルに添えて出されるつまみと同じだけの満足感はまちがいなく得られるのではないかと。惜しむらくはオキシロー先生の本がどれも絶版していること。古書の物流にもあまり乗っていないようで、あまりお見かけしません。お求めの際は、お近くの古書店でどうぞ。2011/12/07
Naoko Mizuno
1
これまた引っ張り出した本。 短編集です。 読み終えると、何故かいいオンナになった気分になってしまう。背伸びしたかった、若かった自分に戻ったみたいな気分。 でも、昨日は同僚と、居酒屋で飲んじゃった。 作者が書かれているような、素敵なbarはなかなか、敷居が高いなあ。 2020/03/20
