内容説明
上総飯野の保科家から、会津松平家に養女として入った照姫は、世子・容保との結婚は叶わず、いったん他家へ輿入れする。しかし、幕末の動乱に容保の身を案じる照姫は、自ら離縁を願い出て再び松平家に戻った。京都守護職として尽力したにもかかわらず、容保はやがて、賊軍として追討される身となり、鶴ヶ城に落城の時が近づく。幕末の会津藩を舞台に、姫君の悲恋を描く表題作のほか、「間諜許すまじ」「眉山は哭く」「明治四年黒谷の私闘」など、維新期の時代の波に翻弄された無名の人々を描いた四篇を収める、佳品短篇集。
著者等紹介
中村彰彦[ナカムラアキヒコ]
1949年、栃木県栃木市に生まれる。本名・加藤保栄。東北大学文学部卒。72年、第三十四回文学界新人賞佳作入選。87年、『明治新選組』で第十回エンタテインメント小説大賞、93年、『五左衛門坂の敵討』で第一回中山義秀文学賞、94年、『二つの山河』で第百十一回直木賞を受賞。73年より91年まで文芸春秋に勤務
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感想・レビュー
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どぶねずみ
24
中村彰彦さんが描く幕末は鮮烈な悲哀に満ちている。本短編集の中でも『恋形見』は、会津藩主・松平容保を愛した照姫の生涯を通じ、時代の荒波に翻弄される女性の悲恋を見事に描き切った傑作だ。政略に阻まれて結婚は叶わず、離縁してまで容保の安否を案じる照姫の情熱と覚悟に胸を打たれる。京都守護職としての責務に苦しみ、やがて賊軍となる容保の運命と、それを見つめる彼女の静かな強さが対照的。華やかな歴史の裏で、名もなき人々が抱いた純粋な愛情と深い哀しみを掬い上げている。歴史小説の醍醐味が凝縮された忘れがたい一冊である。2025/10/05
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