出版社内容情報
「バルチック艦隊は必ず対馬水道に来る」苦悩する東郷司令長官を支えた軍略の天才、島村速雄。日清・日露の海戦に不滅の足跡を残したにもかかわらず、生涯その功を語らなかった名将の清廉な生涯を描く歴史長編。
内容説明
「バルチック艦隊は必ず対馬水道に来る」―ロシアの大艦隊を迎えるにあたり、苦悩する東郷司令長官を名参謀として支えた軍略の天才、島村速雄。近代国家として船出し、国際関係の緊張が高まる明治日本にあって、島村は日清・日露の海戦に不滅の足跡を残す。だが、栄光の日本海軍を育て上げたにもかかわらず、生涯、自らの功を語ることはなかった。数々の戦いのさなかにあっても、常に人道を重んじ、明治のこころを貫いた海の名将の清廉な生涯を雄渾に描く歴史長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tomoichi
9
日清日露の戦役で活躍した海軍の名将島村速雄を描く伝記。東郷平八郎と秋山真之の間にいた人で自信の功を語らなかった為にあまり一般的には知名度は低いが、逆にそんな彼を主人公にしているので他の日清日露ものとは全く違う視点で語られているので新鮮でした。オススメ度70点。2016/05/12
Kamabonz
5
なんか地味な人だなぁと思っていましたが、明治の軍人はやはり優秀な人が多かったんですね。 軍全体も最新鋭の装備を揃え、さらに数的にも有利な状況を作ろうという姿勢で戦争をコントロールしていましたね。 この時代の人たちは優秀で世界を相手に勝負を繰り広げ、負けなかったことは確かなのですが、後進の育成には成功しなかったようです。 軍神とか言われてしまうと、ちょっと理屈を言いにくくなってしまいますよね。2017/05/16
千田義則
3
【主人公】島村速雄(1858〜1923):日本海軍;元帥【目次】若き参謀/丁汝昌との対決/「須磨」の模範艦長/旅順へ/敵は対馬水道/元帥への道/解説:半藤一利【一言】日露戦争における連合艦隊司令長官、東郷平八郎を参謀長として助けた島村速雄については、「坂の上の雲」を読んだ時から詳しく知りたい人物の一人であった。バルチック艦隊がどの航路でウラジオストクに向かうかについて最後まで懊悩していた東郷に、「敵に海戦というものを知っている提督がひとりでもいるならば、敵はかならず対馬水道にくる」と明言し見事的中。2017/07/24
maito/まいと
3
筆者のコラムを読んで読んだ1冊。史料を読み込んで、実際に即した人物像を描き出す筆者の特徴を余すことなく発揮した1冊。歴史に埋もれた、というより自ら埋もれることを選んだ島村の生き様が、心に響いてくる。また、日露戦争後の日本海軍についても語られる、割と珍しい1冊となっている。2009/10/08
まさみつ
3
相変わらずこの方は歴史上目立たない、しかし人間的魅力に溢れる人物を探し出してくるのが上手い。日清・日露両戦争で名参謀であったにも関わらず、陰の存在であり続けた島村元帥のお話。明治~大正の帝国海軍の記録としても興味深い。2009/09/11