内容説明
平和が続き、爛熟極まる江戸の天保年間、闇に生き、悪に駆ける者たちがいた。博奕好きの御家人・片岡直次郎(直侍)、辻斬りの剣客・金子市之丞、抜け荷の常習商人・森田屋清蔵、元料理人の丑松、直侍の恋人で吉原の花魁・三千歳、ゆすりの名人で御城坊主の河内山宗俊。6人が挑む悪事は絡み合い、最後の相手はなんと御三家の水戸藩。悪党ゆえの悲哀をあますところなく描いた連作時代長編の傑作。文字が大きく読みやすい新装版。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
1927年(昭和2年)、山形県生まれ。山形師範学校卒。71年「溟い海」でオール讀物新人賞、73年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞し、時代小説作家として活躍。86年『白き瓶』で吉川英治文学賞、89年(平成元年)菊池寛賞を受賞。97年1月、69歳で永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
117
私事の引っ越し荷造りに重なり、細切れ読書で間延びしてしまったのが心残り。さて物語は、吉原の花魁・三千歳を芯に据えて、想いを寄せる6人の男たちの連作は実に面白い。三千歳が、男がのめり込むほどのいい女。ぜひ会ってみたい女だ。どいつもこいつも腹に一物あるのに憎めない男たち、中には必死の思いで金を工面しての吉原・三千歳詣でが、なんとも涙ぐましくて可笑しい。練りに練った台詞の妙、引き込まれる情景・情況描写は、藤沢小説ならではの読み心地だ。一段落したら、もう一度ゆっくり味わいたい秀作です。2017/09/05
優希
42
闇に生き、悪に駆ける悪党たちの物語です。藤沢文学に見られる、善と悪の狭間に堕ちた「哀しみの悪」ではなく、完全にエンターテイメントとしての悪が描かれているような気がします。6人の悪党たちが挑む悪事が絡み合い、最後は水戸藩主と対決する様は手に汗握ります。悪党でありながら更なる悪を倒すので爽快感は抜群でした。それでもやはり悪党ならではの悲哀を感じさせる部分もあります。それでも藤沢文学としては異端の作品と言ってもいいでしょうね。面白かったです。2014/09/25
ぶんぶん
22
【図書館】「天保六歌撰」を基にした作品。 当然、主人公たちの名前は知っているが、何をしたのか詳しい筋道は知らない。 河内山宗俊くらいは知っているものの後は・・・一人一人の悪の路を淡々と描き、小気味の良い悪党面を見せると言うかその反面辛さが光る。 悪というより庶民の裏側を垣間見る感じ、好きで悪をやってるんじゃない、生きる手立てだ。 悪が最後にどうなるか、死刑、逮捕、最後は優しい、生き延びる一縷の望みが・・・後はどうなるか余韻を持たせているのが良い。 藤沢文学の流れですね。 さて、「蝉しぐれ」に移るか。2021/12/21
taku
16
【海坂藩城下町「寒梅忌」イベント】下敷きになっている講談、歌舞伎の天保六花撰をよく知らないが、どこか愛しおしさを感じさせる小悪党や、そいつらと繋がる花魁にしっとりした存在感を持たせる筆が藤沢。それぞれが絡んでいく連作短編は、進むほど面白くなってくる。案外あっさりした読み味で、もう一編ぐらい書くつもりだったように思える締めかたは若干消化不良。しかしそこは藤沢。人情と愛情と哀愁の周平カラーにしっかり染めてくれるのである。2019/01/25
jima
14
DVD で映画「武士の一分」と「蝉しぐれ」を見て、無性に藤沢周平さんの本が読みたくなり、図書館で借りる。少しタイプの違う悪党の話だったが。天保六花撰の6人の話。6章からなる。1、直侍片岡直次郎 2剣客金子市之丞 3、盗賊、商人の森田屋清蔵 4、博徒、暗闇の丑松 5、吉原遊女三千歳 6、河内山宗俊2021/07/16
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