内容説明
〈珍瓏〉すなわち、鬩ぎあう石と石が不思議な幾何学模様をつくる盤面全体に及ぶ詰碁―。通称「碁の鬼」と呼ばれる槇野九段が対局中に殺された。羽織袴をまとった仰向けの首なし屍体で…。あるべきものがない異様さ。謎の詰碁に秘められた殺人の宣告。前代未聞の予告首切り殺人の謎を追って、知能指数208の天才少年牧場智久とミステリーマニアの姉、その恋人の大脳生理学者の素人探偵トリオが迷宮事件を推理する。鬼才・竹本健治の幻の代表小説ゲーム3部作「囲碁編」待望の第2弾登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
106
囲碁の対局場面といい、珍瓏という盤面全体に及ぶ詰碁に鬼の意匠を凝らしたり、また盤面に暗号を隠す、更には2ページのみだが「囲碁原論・試論」と題した囲碁に関する考察論文を挟むなど、テーマに対して貪欲なまでにミステリを加味し、またそれを可能にする深い造詣があることが当時26歳にして窺われる。たった1つの碁石で部分的には否とされていた物が全体的に有と反転する碁の深さは理解できた。それは即ちたった1つの手掛かりから全てが反転する美しいミステリを見ているかのようだ。それこそが竹本氏が本書でやりたかったことなのだろう。2018/06/05
BUBI
22
普段、あまり推理小説は読まないのですが、囲碁が題材なので読んでみました。プロの対局シーンはいいですねぇ。本物もこんな感じなんだろうな。雰囲気が伝わってきます。殺人事件の真相も納得いくものでした。作者の竹本氏は1993年当時、五段とのこと。私は一応、初段ですが、五段なんて言ったらアマチュアではめちゃくちゃ強い人。うらやましいなぁ。この小説当時はコミは五目半だったのですね。今は6目半だし曲がり四目の死も当たり前のように教わったから、囲碁の世界も少しずつ変わってるんだなぁと思いました。2019/08/18
空猫
20
細かい点はともかくも,経過や展開解決編のデジタルさ(論理的厳密性)よりもむしろ根本のキーとなっている脳・神経に関する問題が全体を支配しているという点で確かにシリーズとして通底するものがあるし,ここにこれらの作品の価値がありそう。碁の蘊蓄にしても,ストーリーに一見無関係に思えていて,実はルール改善のお話が「部分から着手して正しくし,正しいもの同士をそれらしく積み上げていっても,全体としては正しくならない」というテーマとして共鳴しているのだから良くできている。2017/10/25
ピップ
18
囲碁棋士が殺される話。ものすごく囲碁の話です。囲碁を知らない人が読んで楽しめるのだろうかというくらい(笑) とりあえずルールは知ってたので楽しめました。囲碁ってものすごく単純なルールで、ものすごく奥が深いゲームなので、囲碁好きな作者がテーマにしたかった思いもすごくわかります。この本を読んで囲碁を始める人がいると嬉しいです。2020/11/30
Yuki
16
碁についての知識は全然ありませんが、その世界の奥深さを感じました。探偵役の2人のキャラもよく、読みやすかったです。初読みの作家さんですが、追いかけてみたくなりました。2019/01/22