内容説明
近未来、急速に軍国主義化する日本。少女だけで構成される武装組織「プロメテウスの処女」があった。私的な組織でありながら、独自に銃器、装甲車を備え、市民を取り締まる彼女らは畏怖の象徴となっていた。武器輸出企業令嬢である二宮久仁子は権力を掌握する滝首相から「プロメテウスの処女」の一員となることを求められる。一方、反対勢力からは体内に爆弾を埋めた3人の女性テロリストが首相の許に放たれた―。
著者等紹介
赤川次郎[アカガワジロウ]
1948年、福岡県生まれ。1976年、「幽霊列車」で第15回オール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。作品が映画化されるなど、続々とベストセラーを刊行。2006年、第9回日本ミステリー文学大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nemuro
55
持ち家とは無縁で、ずっと賃貸暮らし。無計画に増え続ける数多の購入本は転勤・引っ越しの都度、段ボール箱に収納され引っ越し荷物と化したまま。定年退職し富良野に定住後、直近から遡って少しずつ開梱し本棚に並べてようやく「本・根室」(2007年頃の購入本)まで。1980年代、札幌勤務を契機に列車での長距離移動も増え習慣化された読書。最初は赤川次郎ばかり読んでいた。なので未開梱な「本・稚内」以前の段ボール箱内には数十冊が眠っているに違いない。しかし本書は初読。珍しくも近未来が舞台のサスペンス。世界の恐怖を予感させる。2025/04/09
『よ♪』
54
再読。赤川作品としては極めて異色な近未来サスペンス。初読は幼少の頃。その後の読書傾向、モノの見方、考え方に影響を与えた個人的に最重要作品──。右傾化の進行と形骸化する与野党、蔓延る隠蔽。徴兵制導入と軍需産業の更なる発展を目論む首相。米国間の軍事利権と結託。"プロメテウスの乙女"は首相の手引きで作られた少女のみで構成する武装組織。政治的プロパガンダに擦り寄る大衆。"やった感"が大好きな民衆。力を持たない者の反抗、それはテロ──。この歪んだ社会は現実に歩んだ道程。辿り着いた現在は輝いてる?現在から進む未来は?2021/02/28
とんこ
31
昔々に読んで強烈な印象だった本。これでギリシャ神話のプロメテウスを覚えた。再読ではそこまで強い印象はなかったけど、日常が独裁的軍国主義に傾いてゆく不気味さと、抗うために命をかけるしかなかった若い人の哀しさ、銃乱射や爆破テロ事件のニュースを目にする事の少なくない今複雑な思いで読了。2024/04/13
そうたそ
29
★★☆☆☆ 後の「東京零年」に連なるテーマ性を孕んだ異色作。普段の赤川作品に見られるようなユーモア性は皆無で、終始シリアスかつ冷静なストーリー展開が赤川次郎としては異色である。この作品を現代社会と重ねる人もいるだろうが、そもそも個人的にはそちら側の思想の持ち主ではないので、あくまで作品は作品だし、別に未来を予見していた、すげーとも思わない。赤川さんにしても、作品は作品として書いており、個人の思想とはまた別のものとして作品は存在していると思う。内容的には異色だが、いつもの赤川作品の方が面白いよねという程度。2017/07/20
『よ♪』
21
実は再読。ずっと子供の頃に読んだ。違う表紙の角川文庫。当時は『まさかね。良くできたフィクション』的な?だって平和だもんね、裕福だもんね的な?でも、すっごくすっごく時間をかけて変わってない?アレに媚びうる感じも含めて、長い長い年月かけて変えてない?あの人に感じた不安、この人では見た目の穏やかさに紛れて伝わりにくい。ホントにみんな真剣に考えてる?勿論『右』『左』『平和』『軍事化』、結果がどっちに転ぶかなんてわからない。どっちが得かもボクらには当然わかりっこない。2017/11/25