内容説明
「ひさかさんっ、あそぼ」「あそぼ、あそぼ」。ユキは毎朝わたしの部屋に遊びに来る。背丈は八十センチにも満たない、まだ二歳六ヵ月の幼児なのに、言葉はちゃんと発音するし、時計まで読めてしまう。ユキは、短くなって使えなくなった鉛筆、“チビ”で遊ぶのが好きだ。手裏剣みたいに投げるのだ。そうして朝の二時間ほどをわたしと過ごしたのち、ユキの、ひとりぼっちの長い一日が、またはじまる。ユキのママはユキを置いて家を出て行ったきりなのだ―。『愛を乞うひと』の著者が贈る、せつなく、胸に迫る作品集。
著者等紹介
下田治美[シモダハルミ]
1947年東京生まれ。長編小説『愛を乞うひと』(角川文庫)で熱い支持を得る
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感想・レビュー
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りょう
4
ハルさんは、子育て時代のエッセイをとっても楽しく読んだ作家さん。しばらく作品を見てないなあと思っておりました。ずいぶん作風が変わった気がします。子どもに対する深い愛情は変わらないけど。2021/12/18
*深亜*
0
下田さんの本はエッセイしか読んだことがありませんでしたが、物語も面白かったです。母親や母性がテーマでしたが、高校生の私には「ふーん、そういうものなのか」という程度の認識でした。もう少し大人になってからもう一度読み返したいと思います。2012/09/22
れっこ
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表題作の「ユキの伝言」では母性の欠如した母親、「十八歳の誓い」では出産するために最後の賭けに出た女性教師、「診断名異常なし」では娘が引きこもりになってしまいカウンセリングを受ける母親が出てくる。はっきり言って、コワイ。2003/08/16
旅猫
0
図書館で除籍棚にあったので持ち帰って読んでみたが、除籍するのは勿体無い本だと思う。三篇から成る短篇集なのだが、どれも良かった。2020/02/02