内容説明
真沙子は、深い山のなかを遊泳していた。小さな池の傍らの柳の下に白く長い着物を着た女が見えた。その場所だけ明るく輝いている。ドキッとするほどの美貌だ。額の真ん中に、紅で鮮やかに花鈿が描かれ、肩から白衣を落とすと、豊満な裸身が目に灼きついた。「あれが楊貴妃?」恋人の佐野保孝とデート中、嵯峨野の野宮神社前で佐野が拉致され、事件に巻き込まれた内藤真沙子は、3日後、病院のベッドで覚醒した。真沙子が体験した世界はLSDの作用か。誘拐犯からの楊貴妃の古文書を要求する電話で、真沙子は佐野と自分の宿命を知り、佐野を追う。