内容説明
花は、自分が一番美しく見える季節を知っているかのようだ。桜の花も、真夏の太陽の下では、寝ぼけた色にしか、見えないだろう。春のけだるく霞んだ空気のなかで、桜はその狂おしい美しさを発揮する。憂いを含んだ紫陽花は、雨の季節に。元気いっぱいの菜の花は、早春に。もっと元気な向日葵は、くっきりとした夏の光のなかに―。四季の花を、歌と写真で詠いあげる、鮮やかな写真歌文集。366日の花言葉つき。
目次
春(チューリップ;葉桜 ほか)
夏(あじさい;サンダーソニア ほか)
秋(孔雀草;ブーゲンビリア ほか)
冬(エリカ;シンビジウム ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
289
春夏秋冬のそれぞれの季節の花に寄せた歌40首。俵万智さんの30代前半の歌群だ。「サラダ記念日」のような新鮮さはないものの、何首かは練達の歌も。「去年ともに歩きし人よ『いない』ということ思い知る葉桜の下」。また、花に託するがゆえに制約も生まれ、やや窮屈な歌も。いずれにしても、ここにいるのはプロフェッショナルな歌人、俵万智だ。タイトルは「ブーゲンビリアのブラウスを着て会いにゆく花束のように抱かれてみたく」から。なお、巻末には1日ごとの花と花言葉の付録が。私のはキングサリ(知らない)で、花言葉は「哀愁の美」。2016/01/11
新地学@児童書病発動中
108
花と短歌の相性は良いと思うし、まして詠み手が俵さんだったら、素晴らしい内容になるのは間違いない。恋の歌がほとんどで、咲いてあっという間に散ってしまう花のはかなさと、恋愛の切なさを重ねあわせながら読んでいった。写真の方は透明感のあるものが多くて、眺めていると心が透きとおっていくような気持になった。お気に入りの一首をご紹介。「昨年とともに歩きし人よ「いない」ということ思い知る葉桜の下」2015/07/01
あや
21
再読。季節感のある短歌、俳句が詠みたくなって、季節感のある本書を手に取った。雑誌「花時間」の連載が纏まった1冊。初読時より心惹かれる歌が違う。〈チューリップのペンダントして歩く道 鈴のようにも涙のようにも〉チューリップが鈴の形にも涙の形にも似ているという着眼に感嘆する。また初読時は水仙の歌がいちばん好きだと思ったが、俵さんが中高生時代をお過ごしの福井の花なのだそうだ。とある会合で福井は詩人がいないという話になったけど、俵万智さんと中野重治がいるではないか、と思った。2025/11/05
rokoroko
16
ヒヤシンスー思い出だらけのこの部屋の一つ一つを花と咲かせて。今咲き始めた水栽培のヒヤシンス早朝リビングにいくと花の香りが愛おしい。ひとつ一つの唄が花をめでる気持ちあふれて楽しい2022/02/26
双海(ふたみ)
15
右頁に花を詠んだ短歌とそれに纏わるエピソード、左頁にその花の写真を添える。鮮やかな写真にうっとり…2013/04/26




