内容説明
霧の中に響く、腐れ橋を渡る妖しい足音…。罪に戦く人間の脅えを映す表題作『枕に足音が聞える』をはじめ、家族の団欒に突如“寄生”した老婆の行動を覗く『連鎖寄生眷属』。暗黒の縦穴に落ちたサラリーマンを描いた『虫の土葬』。愛猫と愛犬を失った男と女の復讐劇の『魔犬』など、執着心の恐怖を感じる傑作ホラー短篇集。七つの恐い話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
70
人間の欲とある事がきっかけに露わになっていく妄執の滑稽なまでの悍ましさを描いた短編集。だって、初っ端の「殺意の造形」は犯人以上に刑事の破滅的なドMぶりにひくしかないもの(^^;;現実にも起きてしまった恐ろしい事件を彷彿とさせる「連鎖寄生眷属」は真逆の真相に心底、ゾッとしました。「妖獣の債務」はラストが中井英夫の「公園にて」のようだが、その前の英吉氏の贖罪を読んでいるとその報われなさが余りにも居たたまれない。表題作は真の被害者達が置かれた立場や掴んだ束の間の幸せを思うとあの結末を招いた刑事に侮蔑しか感じない2017/11/06
ちばと~る
20
森村誠一大先生の傑作ホラー短編集。40年くらい前の傑作ホラーを集めたモノ。人の善意につけこんだ上がり込みババアの話が面白い〜表題作も意表を突く展開で良かった!!愛猫家のヤツは二つの事件が並行進行しててのちにクロス!てゆー手法で面白いっすwこれからも森村誠一作品読むぞ〜2013/07/01
dynamonda
5
表題作含め短編7作収録の短編集。ホラーとミステリの融合作としてどれも完成度がピカイチ。普通のミステリかと思わせて最後に恐怖のオチで落とす作品もあったりと、思いもよらない展開がどの作品にも仕組まれていて、どんでん返し作品が好きな人にもおすすめできる一冊。どの作品も完成度が高いのだが『殺意の造形』『枕に足音が聞える』『妖獣の債務』がお気に入り。中でも『妖獣の債務』が一番好き。主人公の子供時代、廃屋に住む浮浪者”ゴンちゃん”とのとある事件がその後の人生を変えたというエピソード。感動と恐怖を両立した素晴らしい短編2025/01/11
えくおとさず
4
☆☆☆☆☆ どの話も世にも奇妙な物語の当たり回みたいでよかった。個人的には「虫の土葬」が好き2021/08/17
きら
4
橋の爆破に巻き込まれて一人の男が死んだ。それは、ただの事故かと思われたが、捜査にあたった若い刑事は、これは巧妙に仕組まれた殺人ではないかという疑惑を抱く。表題作を含む全七編のホラー短篇集。 完全なホラーというよりもホラー色の強いミステリ、かな。初出が四十年近くも前なだけあって、さすがに今読むと時代を感じる(逆に、それが味になっているという部分もある)けど、どの短編も凝っていて面白い。不況の煽りを受けて退職を余儀なくされた会社員を描く『虫の土葬』なんかは、また一周して現代の世相にマッチした小説になっている。2012/06/04
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