内容説明
上司の妻と不倫に陥り、大手企業を退職した善次郎は、繊維問屋を営む家族からも冷遇され、土地取引に身を投じた。金も背景もなく、ただ利殖の才能だけを武器に蓄財の階段を駆け上がる善次郎の成功物語をとおして、土地取引による利殖のカラクリ、社会悪ともいうべき地価高騰のメカニズムを描出する。土地狂騒曲に踊り、踊らされ狂奔する人間の欲望と無常の姿を描いた経済小説の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まつうら
30
著者自身の土地取引の体験に基づく物語。時代は公共工事が増えだした昭和30年代の後半で、主人公の善次郎は500万の資産を元手に、たった3回の土地取引で莫大な利益を手にする。しかしこれは、法務面に精通し慎重な性格の善次郎だからできたことだ。兄の小弥太が住宅地やゴルフ場の開発に手を出して頓挫してしまったように、土地に絡む欲望を制御できないと取り返しがつかなくなる。土地取引は政治家、地元組合、あくどい地面師などの欲望ややっかみが絡んでくるドロドロした世界。こんな裏側を知ることのできる興味深い作品だ。2022/04/20
oanchan
1
時代モノのイメージしかない著者だが、かつて不動産関係の仕事をしたいたから書いたらしい。昔も今も土地投資に熱狂していた人達がいたんだ。戦後からオイルショックごろまでの話だが、色々参考になった。やはり不動産売買は水モノかな。最終的に高値で買わされてババを引く人がいる。熱狂していると忘れちゃうけど。2024/09/27
RS
1
歴史小説の大御所が土地売買をテーマにした小説を書いていたとは。解説によると主人公のモデルは本人のようなので、そうすると実際の奥さんも小説通りサラリーマン時代の上司の奥さんだった人なのかも。こういうのはあるけどドロドロしたストーリーはなく欲を抑えることで成功する、みたいな話なのである意味安心してサクサク読める。2019/10/23
ネコじいじ
0
読み易かった。2017/04/14