内容説明
明治7年7月、文明開化盛りし頃。日本で初めて発行された“新聞”の大成功をうけ、新聞錦絵は発売された。この“錦絵付きニュース”は、当時多かった文字の読めない人々にも記事が理解でき、増刷に増刷を重ねたのである。これは、一般大衆に新聞というものの興味を促し、新聞普及に大きな功績を残した。しかし、三面記事的な要素の強い新聞錦絵はやがて衰退し、明治12,3年にはほとんど姿を消すことになった―。だが、新聞錦絵は今なお生きている。リポーターが事件を追うワイド・ショーや写真で事件を伝える写真週刊誌のなかに…。本書は明治人のナマの生活を映し出す極彩レポートである。
目次
代表作
「新聞錦絵とは何か」
殺人
妖怪
情痴
世相
珍聞
人物・歴史
「新聞錦絵と私」
「ゴシップ文化と浮世絵」
「現代に息づく浮世絵」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
51
かなり昔に貸したまま返ってこなくなったこの本を再入手そして久々に再読。そりゃ精神はワイド・ショーや写真週刊誌に引き継がれているかもしれないが禍々しいアートとしての味わいは錦絵ならではのもの。やはり残酷な殺人を扱ったものが見応えがあり、鮮血の毒々しい色彩には陶酔感すらある。また人物の表情、女性を描く筆致に潜むエロティシズムなど実に淫靡。時折、珍妙にしか見えない絵が混じっているのも愛嬌があって良い。高橋克彦による解説文が含蓄があり、的確に仄暗い時代の闇へ案内してくれる。2014/09/16
yk
9
新聞錦絵というものじたいはじめて見ました。生々しくて恐ろしかったですよ。八十七歳の老婆恋患いのところで解説に「妖怪の分野に入れようかと悩んだ」って書いてて笑いました。2019/07/08
ひのじ
7
ブックバー大倉さんが薦めていた本。浮世絵の発展とも言うべき明治初期の東スポの生々しい記事。意外と江戸のままだなと感じてしまう。これが高橋克彦の入口になるとは。この本、デビュー作の写楽殺人事件とすぐ後に書かれてる。35年越しで処女作から読み始めてみたい。2020/05/31
紫
5
血みどろの猟奇殺人からオカルト、市井の笑える珍事まで、歌川国芳門下の双璧・芳幾と芳年の巧みな筆遣いにより、時に耽美に、時にユーモラスに、明治の時世と風俗が生々しくも迫力たっぷりに描き出される「新聞錦絵」コレクション。浮世絵カルチャーの通俗性の極致でありつつ、文明開化の徒花ともいえる「新聞錦絵」はとても現代的で、浮世絵観が変わること請け合いの面白さであります。残念なのは文章の紹介に半ページしか割り当てがないため省略が目立つこと。ところどころ高橋克彦先生の解説が意味不明なことになってしまっています。星5つ。2014/10/25
ロシアン
5
自分はすごく好きだけど世間的には価値が低くて信じられないくらい安価で手に入るっていうのは幸せな気分になる。このすばらしさを皆に知ってもらいたいという思いもあるけど、自分の中の価値観を持って収集できるのはやっぱり幸せ。2011/10/05