内容説明
塀の向こうでの5年間、藤堂は燃えるような信念を抱いてシャバに戻った。やるべきことがある。友の供養、落とし前、そして、もう一度でかいヤマを踏むこと―。しかし、かつての仲間に会うために伊豆の下田を訪れた藤堂は、一人の女に出会い、やがて溺れていく。その時から何かが狂い始めた。情念に蝕まれていく藤堂の心、そして一人の男が檻から出てきたとき、破滅へと導く雷鳴がとどろいた。日本を舞台に著者が初めて描く情念の世界。
著者等紹介
船戸与一[フナドヨイチ]
1944年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒。85年『山猫の夏』で吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会賞を受賞。89年『伝説なき地』で日本推理作家協会賞、92年『砂のクロニクル』で山本周五郎賞を受賞。2000年『虹の谷の五月』で第一二三回直木賞を受賞。綿密な取材を基礎にした国際色豊かな冒険小説には定評がある
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ブラックジャケット
14
刑務所を出所する男、という始まりはハードボイルドものの幕開けとしては安定感たっぷり。主人公藤堂幸男は七年前の現金輸送車強奪事件のオトシマエをつけにいくのだ。裏切ったかつての仲間たちへ強烈復讐が前半を緊迫感あふれるものにした。伊東下田に舞台を移し、棚橋洋次に対する復讐は、謎の女梨花の存在に大きく狂わされた。ファムファタールに 骨抜きにされた洋次。幸男と梨花の新しい関係が、洋次を葬った。強盗犯の幸男は殺人という一線を超えてしまった。下田を襲う台風の荒々しさは犯罪を助長させた。嵐とファムファタールの死の共演。 2023/01/16
GaGa
10
船戸作品にしてはスケール感のない作品で、男の醜い情念を描いている。毛色は違うがこれはこれでなかなか楽しめた。梨姫が持つ魔性な魅力がもう少し深く描かれていれば、より面白くなったと思うのだが…2010/08/04
たーくん
6
再読→→→塀の向こうでの5年間、藤堂は燃えるような信念を抱いてシャバに戻った。やるべきことがある。友の供養、落とし前、そして、もう一度でかいヤマを踏むこと―。しかし、かつての仲間に会うために伊豆の下田を訪れた藤堂は、一人の女に出会い、やがて溺れていく。その時から何かが狂い始めた。情念に蝕まれていく藤堂の心、そして一人の男が檻から出てきたとき、破滅へと導く雷鳴がとどろいた。日本を舞台に著者が初めて描く情念の世界。 2020/02/22
カワセミ440
1
いろんなところに伏線が・・って思ってたら伏線でも何でも無かった・・って感じで読み終わっちゃった。『蛇は有益だから?殺すな』とか『高麗神社があるから・』とかとか。梨姫の魔性な魅力?も今一つ私には響かなかったし・・。船戸さんの作品は例えば東南アジアとかアフガンとか、ロシアとかの危険な紛争地域が舞台じゃないと登場人物たちが踊りださないような気がする。彼の国の不法滞在女性/梨姫のために?そこまで人生踏み外すってどうなんだろう?そこまで魅力が、どこに魅力がある??まあ、そこが小説でそこが船戸さんって事なんだろうか。2016/03/30
4545
1
久しぶりの冒険小説!と思ったら、全然違う。弱者の施設とか、女に溺れて落ちていくとか、なんだかなぁ。解説に「郵便配達は二度ベルを鳴らす」をモチーフにと書いてある。あぁ、女の虜になった男が車を走らせるときの焦燥感ったら、まさにって感じ。面白くなかったです。2010/04/25
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