内容説明
大谷刑部は、光を失った目で人生の岐路となった賤ヶ岳の山稜をのぞんでいた。「七本槍」に乗り遅れ、官僚派武将の道をたどることになった過去が脳裏に甦る―。その「不戦の武将」刑部が今、西軍の一方の旗頭として、家康の大軍と勝敗を決しようとしている。関ヶ原への途上、刑部は感慨にうちふるえる。豊臣家への忠節、石田三成への義、そして自らの武断派への夢、すべてを賭けた最大の戦が幕を開ける!知勇兼備の名将を描く大型歴史小説。
感想・レビュー
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MIKETOM
9
大谷刑部少輔吉継。キーワードは二つ。「石田三成」と「癩病」。日本史上で癩病患者の有名人ってのは吉継以外に聞いたことがない。悲劇の武将。三成とは莫逆の友であり、関ケ原の時は吉継は初め家康側につこうとしたが、三成に殉じて勝ち目の薄い西軍に身を投じる。そして戦場では獅子奮迅の働きをする(詳しく書けないのが残念!)。戦場では目も見えず歩くことさえできなかった。それでも采配を振り続け、家臣たちも吉継に殉じて見事に散っていった。有能さに加え人徳面も優れていた。戦国時代の快男児。真田幸村の義父でもある。2022/02/17